シンプルだから続けられる!初心者でも簡単でおいしい常備菜のススメ
面倒なことも多い、毎日の食事づくり。手作りのご飯が食べたいと思っても、疲れていたり忙しかったりすると、つい手軽な外食やレトルトに頼ってしまうという人もいるかもしれません。そんなときにおすすめなのが、冷蔵庫から出してすぐにおかずに変わる「常備菜」です。
常備菜と聞くと「手が込んでいそう」「まとめて大量に作るのは時間がかかりそう」というイメージも聞かれますが、実際はどうなのでしょうか。簡単&シンプルな常備菜を提案する、オーガニック料理教室ワクワクワークの菅野のなさんに、常備菜づくりのコツを伺いました。
常備菜で毎日の食事づくりが格段に楽になる
――そもそも、常備菜とはどういうものなのですか?
菅野さん(以下、敬称略):常備菜は、多めに作って保存しておく「作り置きのおかず」です。発酵させたり熟成させたりして長期間食べられる保存食とは違って、常備菜は基本的に2~3日で食べきるフレッシュなものと私は定義しています。「日々の食生活のためのストック」と考えていただくとわかりやすいかもしれません。
――暮らしに常備菜を取り入れると、どのようなメリットがあるのでしょう?
菅野:毎日の食事づくりが格段に楽になります。疲れているときや時間がないときも、冷蔵庫に常備菜が2~3品あれば、ごはんを炊いてお味噌汁を作るだけでOK。メインが欲しい場合はサッとお魚でも焼けば、あっという間にバランスのとれた献立が出来上がります。「ごはんづくりが面倒だな…」と思っても、冷蔵庫に常備菜があるだけで、気持ちに余裕が生まれるのではないでしょうか。
また、常備菜はお弁当にもおすすめです。ごはんとメインのおかずがあれば、あとは常備菜を詰めてお弁当が完成です。彩りもいいですし、不足しがちな野菜も常備菜で無理なく補えます。
――常備菜をまとめて作るのは大変そうなイメージもあるのですが…。
菅野:私が提案する常備菜のレシピは、野菜を茹でるだけ、炒めるだけ、塩もみするだけといった、簡単なものばかりです。味付けもとてもシンプルで、教室でも「これだけでいいの?」と驚かれる人が多いです。
でも、シンプルな常備菜には、手間がかからないことに加えて、アレンジがしやすいというメリットもあります。例えばキャベツなら、買ってきた日に多めに塩もみをして保存しておけば、サラダ、和え物、煮物、スープなど、さまざまな料理にアレンジできます。また、乾燥ひじきは1袋分をまとめて水で戻して少量のめんつゆで下味をつけたら、小分けにして冷凍保存しておきます。食材と調味料を足して定番の煮物にしたり、ごはんに混ぜ込んでおにぎりにしたりと、いろいろな使い方ができますよ。
オーガニック料理教室ワクワクワーク代表の菅野のなさん。
――なるほど、それなら無理なく続けられそうです!
菅野:
常備菜は日々の生活のためのものですから、継続できなければ意味がないと思うんです。私がシンプルな常備菜を提案しているのは、家事や育児で忙しい人や料理が苦手な人にも「ご飯づくりは難しいことではない」と伝えたいからです。
小学生以上のお子さんがいる30代から40代のママが夕食の準備にかけている平均時間は、専業主婦で46分、働くママで40分というデータがあるそうです。常備菜の中には、数分から10分程度で完成する物も数多くあります。時短によって生まれた時間で、家族と過ごしたり自分の好きなことをしたりできれば、きっと毎日をより豊かな気持ちで過ごせると思うんです。
食材と調味料にこだわり、味付けは極力シンプルに
――常備菜を作る上での基本ルールを教えてください。
菅野:
基本となるのは、3日以内で食べきること、味付けは極力シンプルにすること、そして食材と調味料にこだわることの3つです。
シンプルな常備菜は、一つひとつの素材にこだわるほどおいしくなります。例えば塩は、昔ながらの天日干しで作られた天然塩がおすすめ。少量を加えるだけで、味をしっかりと決めてくれます。食材本来の味がより引き立って、素朴ながらも深い旨みや甘みを楽しめるんですよ。
――使用する調味料も基本的なものだけでいいのですね。
菅野:「素材にこだわる」といっても、一度に全部を変えようとすると大変です。ですから、私たちの教室では、最初は基本の調味料から厳選して、そこから少しずつ全体の食材で気に入った物を選んでいくことをおすすめしています。
「こだわりの調味料は値段が高いのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、実際に味わってみると違いが実感できるはずです。たくさんのタレやソースを買い揃えても、使い切れないうちに賞味期限が過ぎてしまった…ということもありますよね。余計な物を加えず伝統的な製法で作られた調味料は、一度に使う量も少しで済みますし、大切に使おうという気持ちも生まれます。いくつもの種類をそろえる必要もないので、トータルで考えればリーズナブルなことも多いんですよ。
調味料が違うだけで、素材の味がぐっと引き立つという。
――食材選びのポイントはありますか?
菅野:常備菜に用いるのは、にんじんや大根、たまねぎといった身近な食材から始めてみてください。ポイントは、旬の新鮮な食材を選ぶこと。また、野菜や芋類は、皮にも栄養がたっぷり詰まっています。皮をむかずに丸ごと食べられるように、オーガニックや無農薬の野菜を選ぶといいですね。皮をむかなければ調理の手間がひとつ省けますし、生ごみも減らすことができます。
食材や調味料にこだわることは、生産者の人々や地域を応援することでもあります。「これはどうやって作られたのだろう」と思いを馳せながら食材を選べば、日々の買い物ももっと楽しくなるのではないでしょうか。
――常備菜を保存するときの注意点はありますか?
菅野:出来上がった常備菜は、粗熱をとってから容器に入れてください。熱いまま容器に入れると、湯気などで余分な水滴がつき、傷みを早める原因になってしまいます。容器に入れた後は冷蔵庫で保存し、夏場は2日、それ以外の季節は3日以内を目安に食べきりましょう。
保存容器は、そのまま食卓に出せて、直火にもかけられる琺瑯(ホーロー)素材の物がおすすめです。容器ごと温め直すことがなければ、ガラス製の容器も使いやすいですよ。透明で中身が見えるので、冷蔵庫に入れたままうっかり食べ忘れることもありません。
すぐに実践できる!手軽で簡単な常備菜レシピ
菅野さんに、すぐに実践できてアレンジもしやすい常備菜のレシピを教えていただきました。
サラダやサンドイッチに活用できる「塩もみにんじん」
にんじん1本を千切りにしてボウルに入れ、塩ふたつまみを入れて5分程置くだけ。
にんじんがしんなりしたら、手でしっかりと水気を切り、保存容器に入れて冷蔵庫で保存します。
菅野:
サラダやサンドイッチの具材にも使えて便利な塩もみにんじんは、ぜひ冷蔵庫の定番常備菜にしてほしい一品です。しっかりと水気を切ることで保存性が高まり、口当たりも良くなります。
にんじんを切るときは皮付きのまま、まず薄い輪切りにして、それから千切りにしていくといいですよ。
菅野さんの教室では、にんじんはヘタの黒い部分だけを取り除き、皮ごと使う。
子供も食べやすい「たまねぎのソテー」
たまねぎ大1個を繊維に沿って薄切りにし、油を引いたフライパンで7~8分炒めます。
その後、塩ひとつまみで味を整え、1分程炒めたら完成です。
蒸したじゃがいもと合わせてジャーマンポテトにしたり、ホワイトソースのベースにしたり、多彩なアレンジが楽しめます。
塩もみにんじんをアレンジ!「時短なます」
時短なますは、塩もみにんじんを使った常備菜です。大根250gを皮付きのまま千切りにしてボウルに入れ、塩ふたつまみを振ってよくもみます。しばらく置いてからもう一度もみ、そこに塩もみにんじん20gを加えて混ぜます。
その後、酢大さじ2、きび砂糖小さじ1強を入れ、よく混ぜたら出来上がりです。
菅野:作り置きの塩もみにんじんを使うことで、見た目もきれいな紅白なますがあっという間に完成します。大根は塩もみした後、絞らないのがポイント。お好みで、千切りにしたゆずの皮を散らしてください。
毎日のごはんから幸せを届けたい
――作り方が本当に簡単で、普段料理をしない人でも実践できそうですね。
菅野:毎日家族の食事を作っている子育て中のお母さん、お父さんをはじめ、一人暮らしの人や夫婦二人暮らしの人、高齢者など、簡単でおいしい常備菜は、すべての人々におすすめです。シンプルで素朴な味付けが、意外と小さなお子さんにも好評なんですよ。むしろ、大人よりも子供のほうが、素材その物の味や鮮度を敏感に感じ取っているような気がします。
教室では、いろいろなアレンジレシピも紹介していますが、それよりも蒸しただけのお芋や茹でただけのブロッコリーが好きというお子さんも多いですね。素材本来の味を活かした味付けは、子供の味覚を養うという意味でも大切なことなんだなと感じています。
――最後に、常備菜づくりにこれから挑戦してみようという人へメッセージをお願いします。
菅野:常備菜が冷蔵庫に3品ある状態をキープできると、毎日の食事づくりが本当に楽になります。だからといって、「必ず3品作らなくては」ということではありませんし、「厳選した食材や調味料でなければダメ」ということもありません。
今回ご紹介したレシピも、切って塩もみするだけ、炒めるだけといった、とても簡単なものです。まずは1品から、肩の力を抜いて、無理のない範囲で作ってみてください。そうすれば、続けるうちに「もう何品か作ってみよう」「調味料にもこだわってみよう」と、楽しみ方が広がっていくと思いますよ。
食事は、人が生活する上で毎日行うものです。その毎日のごはんがおいしければ、きっと365日幸せに過ごしていけるはず。無理なく続けられる手作りのごはんの味を通して、ホッと落ち着くじんわりとした幸せを、これからも多くの人に届けたいと思っています。
<プロフィール>
菅野 のな
オーガニック料理教室ワクワクワーク代表。大学卒業後、就職するも連日のハードワークに体調を崩し、食と健康の大切さを再認識。2007年、管理栄養士である母とともに、オーガニック料理教室ワクワクワークを設立。教室運営のかたわら、イベントやワークショップの開催、レシピ提供、料理教室講師の育成、料理本の出版など、食とオーガニックを軸に多方面で活躍中。著書に「はじめての常備菜」(辰巳出版)、「こころとからだにやさしい ていねいな時短ごはん」(学研プラス)などがある。
執筆者プロフィール