もっと自由に!みそ探訪家・岩木みさきさん伝授「おかず味噌汁」6選

日本の食卓を彩る定番料理、味噌汁。味噌汁を飲むだけでなんとなくほっとできますが、「作るのが面倒」「ワンパターンな具ばかりで飽きる」と、毎日の味噌汁づくりに悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
料理研究家でみそ探訪家の岩木みさきさんは、「味噌汁はこうあるべきという理想論にとらわれないでほしい」と話します。
もっと自由に、食べたい物を――忙しいときほど食事づくりを楽にしてくれる味噌汁の新しい在り方を、岩木さんにご提案いただきました。

ポイントさえ押さえれば、味噌汁はもっと自由でいい

――まずは、味噌の使い道として最もポピュラーな味噌汁について教えてください。味噌は、何を基準に選べばいいのでしょうか?

岩木さん(以下敬称略):
味噌は種類がとても多く、実は認知されていない商品も多いんです。味噌と同じく発酵食品である醤油をはじめ、多くの食品には「日本農林規格(JAS)」が設定されていますが、味噌にはそれがありません。
隣同士の町や村でもまったく異なる味噌を造っていたり、地域の中だけで製造方法を共有していたりすることもあってグループ分けが難しいこと、そして加熱殺菌していない物には酵母や乳酸菌が生きたまま存在しており、科学的なデータとして分析できないことなどが理由です。

なので、味噌の分類についても、決まった形はありません。そのため私は、「麹の種類」「味の違い」「色の違い」で分類できると考えています。ぜひ、味噌選びの参考にしてみてください。

・麹の種類
特別な物を除いて、どの味噌も「大豆」「麹」「塩」の3つが原材料であることは同じです。このうち、麹が米麹なら米味噌、豆麹なら豆味噌、麦麹なら麦味噌になります。最も出荷量が多いのは米味噌で、全国の味噌の8割を占めています。

・甘い、辛いなど味の違い
麹と塩の量によって、甘みがある物、辛みが強い物に分けられます。基本的に塩分が高いと辛めの味噌に、麹歩合が高いと甘めの味噌になります。例えば米味噌の中にも、熟成度合いによってさまざまな味があるので、塩分の含有量に注目してください。以前は、塩分濃度が高い辛い物だと13%くらいの物が多かったのですが、最近は高くても11%前後の物が多くなっています。

・色の違い
味噌の色は、熟成期間と関係があります。豆味噌は基本的に熟成期間が長いので、3年近く長期熟成した物は濃い赤色に。米味噌の場合は、熟成期間が1週間~1ヵ月程度と短い物は淡い白です。だいたい麦味噌は2~4ヵ月、米味噌は6ヵ月~1年の物が多いです。

――いろいろ試して、自分好みの味噌を見つけるのも楽しいですね。

岩木:
そうなんです。味噌に関しては、どんな人も生真面目に考えすぎているような気がしていて…。受け継がれてきた年月が長いせいか、「使い方はこうすべき」「こうでなければならない」といった思い込みが強くなってしまう食材なのかもしれません。

味噌汁も同様に、例えば出汁をしっかりとらなければならないとか、定番の具材の組み合わせとか、そういった固定観念にとらわれて味噌汁づくりのハードルを上げてしまう方が多い気がします。だけど、味噌汁に禁じ手はないし、正解もないと思うんです。 「もっと自由でいい」「もっと適当で大丈夫」ということは、声を大にして伝えたいですね。

――確かに、つい味噌汁には無難な具材の組み合わせを選んでしまう方も多いと思います。

岩木:
極論かもしれませんが、どんな野菜でも、味噌を加えればどうにかおいしくなります(笑)。だから、冷蔵庫の残り物を一掃したいときや、忙しいときこそ味噌汁を作っていただきたいです。味噌汁は糖質・脂質も少なく、野菜などを入れて具だくさんにすることで栄養はしっかり補えます。「この具材は味噌に出合ったらどうなるかな」と考えながら、自由に組み合わせを試してみてほしいです。

――味噌汁をおいしく作るためのポイントはありますか?

岩木:
ポイントは「水分の量と味噌の量」、そして「作る量」です。使うのはどんな味噌でもいいので、水分量150mlに対して大さじ1の味噌を目安に使いましょう。ちょっと多く感じるかもしれませんが、味噌が少なすぎると旨みが足りず、おいしい味噌汁ができません。
それに、味噌汁1杯に含まれる塩分は食パン6枚切り1枚半とほぼ同じ。味噌汁は塩分が多いと敬遠されがちですが、味噌汁の具材でカリウムを摂取すれば、塩分を排出しやすくしてくれますから、飲みすぎなければ塩分のことはあまり心配しなくて大丈夫なんです。
そして作る量は、そのとき食べきれる分だけ、適量で作るようにするといいですよ。味噌汁は、加熱しすぎると味や香りが落ちてたんぱく質が変性し、味わいも塩味を強く感じてしまうようになるからです。

先入観を捨てて、手軽に味噌汁を楽しもう

――今回は、手間なく作れておなかも満足できる「おかず味噌汁」のレシピを教えていただけるそうですね!

岩木:
よく「暑い日は味噌汁が飲みたくなくなる」という声も聞かれますので、そんなときでもご自宅にある身近な食材で簡単に作れてサッと食べられ、おなかも満足するような冷たいおかず味噌汁(冷や汁)のレシピを、6つご紹介します。
基本の出汁は、出汁パックの場合、水はお使いの物の指定量で、和風顆粒出汁の場合は、水150mlに小さじ8分の1くらいを目安にしてみてください。

人数分の出汁に味噌を入れたベースに、具材を後から足すだけでOK。

自宅の冷蔵庫などによくありそうな食材だけでできる「おかず味噌汁」とは…?

切り干し大根の食感が楽しい!「トマト切り干し大根」

[材料]
・水(または出汁)…150ml(1人分)
・味噌…大さじ1
・ミニトマト…2個
・切り干し大根…10g(軽くひとつまみ)

[作り方]
1. 水(または出汁)に味噌を溶いておく。
2. 半分に切ったミニトマトと切り干し大根を戻さずにお椀に盛り、「1」を注ぐ。

オクラでカリウム、ゴマでミネラルがとれる「納豆オクラゴマ」

[材料]
・出汁…150ml(1人分)
・味噌…大さじ1
・納豆…2分の1パック
・オクラ…1本
・ゴマ…適量

[作り方]
1. 出汁に味噌を溶いておく。
2. オクラは軽く湯通しして、薄切りにする。
3. 納豆、オクラをお椀に入れ、「1」を注ぐ。
4. ゴマを振りかける。

ビタミンたっぷりで美肌効果に期待!「レモンアボカド」

[材料]
・出汁…150ml(1人分)
・味噌…大さじ1
・アボカド…4分の1個
・レモン…輪切り1枚
・オリーブオイル…適量

[作り方]
1. 出汁に味噌を溶いておく。
2. アボカドは種を取って皮をむき、食べやすい大きさに切る。
3. アボカドをお椀に入れ、「1」を注ぐ。
4. 輪切りのレモンをのせ、お好みでオリーブオイルを入れる。

疲労回復におすすめ!「鯖かいわれ大根梅」

[材料]
・出汁…150ml(1人分)
・味噌…大さじ1(1人分)
・鯖缶…50g(缶約4分の1)
・かいわれ大根…適量
・梅干し…1個

[作り方]
1. 出汁と味噌を溶いておく。
2.鯖をお椀に盛る。
3. かいわれ大根は根元を落とし長さを半分に切り、鯖の横に添える。
4. 「1」を注ぎ、鯖の上に梅干しをのせる。

包丁いらず、手間いらず「あおさ鰹節」

[材料]
・出汁…150ml(1人分)
・味噌…大さじ1
・あおさ…適量
・鰹節…適量

[作り方]
1. 出汁と味噌を溶いておく。
2. 適量のあおさと鰹節をそのままお椀に入れる。
3. 「1」を注ぐ。

爽やかな香りが食欲をそそる「豚肉焼きみょうが」

[材料]
・出汁…150ml(1人分)
・味噌…大さじ1
・豚薄切り肉…2枚(30g)
・みょうが…1本
・かいわれ大根…適量

[作り方]
1. 出汁に味噌を溶いておく。
2. 豚肉は茹でておく。 3. みょうがは半分に切り、フライパンで軽く焼く。
4. 豚肉とみょうがをお椀に入れ、「1」を注ぐ。あればかいわれ大根を添える。

紡いだ縁をつないで、味噌の魅力を世界に発信中!

――岩木さんは、みそ探訪家として活動されて4年になるそうですね。活動のきっかけは何だったのですか?

岩木:
そもそもの始まりは、中学時代に無理なダイエットで自分の体調を崩したことです。拒食と過食を繰り返すうちにひどく肌が荒れ、考え方もとてもネガティブになりました。そこで、一念発起して食生活の見直しをすると、少しずつ体質が改善され、心身ともに健康を取り戻すことができたんです。

食の力を、身をもって実感したこの一件以来、食のすばらしさを伝える仕事がしたいと思うようになりました。短大で栄養士の資格を取り、卒業後は病院勤務を経て、独立。体に優しい物を追求する中で、日本の伝統調味料に興味を持ったんです。
そして、いろいろ調べていくうちに、味噌を専門にしている料理家がいないことに気づき、自分で極めてみたいと思うようになりました。

――岩木さんが味噌蔵を巡る「みそ探訪」は、そこからスタートしたのですね。

岩木:
「全国にいくつあるかわからない味噌を調べつくすのは無謀だ」と言われながらも、地道に探訪を続け、これまでに70ヵ所の蔵に延べ120回以上伺っています。探訪の過程で学んだことは、多くの方が味噌を知り、味噌をおもしろいと思うきっかけになればと、「みその教科書 」として一冊の本にまとめました。

また、探訪を続ける中で出合った伝統的な木桶仕込みの味噌の魅力と技術を後世に伝えたいと思い、「ガチみそ」シリーズと名づけて商品プロデュースもしています。2022年2月には、農林水産省からのお声掛けで、木桶仕込みの味噌の輸出を促進する「木桶仕込み味噌輸出促進コンソーシアム」も発足。事務局長として、味噌蔵の皆さんをつなぐ役割をお任せいただくことになりました。

――ご自身の足で味噌蔵を巡り、味噌蔵の皆さんと顔を合わせて話をしてきた岩木さんだからこそできるお仕事ですね。

岩木:
味噌に関する思いの強さだけでは関われない大きなお話だと思って、お声掛けいただいた当初は躊躇していたんです。でも、これまで味噌を通じて得た出会いをつないでいくことなら、私にもできると思い直しました。
味噌の業界は、長く地域の味を守り続けてきた蔵元さんが多いこともあって、横の関係性があまり強くありません。それでも、実際にお会いしてみると、義理人情を重んじ、一度できたご縁を大切にしてくれる方ばかり。日本の伝統調味料を大切にして、広く世界の人に知ってほしいという思いの元、皆で発信をしていけたらいいですね。

――木桶文化、ひいては日本の食文化を守ることにもつながりそうです。

岩木:
最近では、従来の味噌を守る取り組みに加えて、将来の食料危機に備えるための取り組みに味噌を活用する動きも出てきています。世界的な人口増加によってたんぱく質の需給バランスが崩れ、既存のたんぱく源ではいずれ人口を支えきれなくなるといわれていますよね。
新たなたんぱく源として注目されている昆虫のコオロギをパウダー状にした物を原材料にして、味噌を造るという相談を受けたんです。正直なところ、私も最初は抵抗があったのですが、実際に仕込んでみると独特の風味があっておいしいんですよ!日本の伝統調味料と、食の未来を担う昆虫食のコラボレーションには、大きな可能性を感じましたね。

こちらが噂(?)のたんぱく質たっぷり、栄養満点のコオロギ味噌。

――なんだか味噌の見方が変わった気がします。味噌の使い方って、自由でいいんですね。

岩木:
はい!普段、料理で醤油を使うところを味噌に変えてみたり、カレーにちょい足ししてみたり、簡単なところから試してみてください。味噌汁も、中華っぽくしたいならごま油、洋風にしたいならオリーブオイルをプラスしてもおいしいんですよ。
また、味噌スープとして、和風出汁ではなく中華出汁や、洋風出汁で合わせるのもおすすめです。意外なところでは、味噌はパンとの相性もいいですよ。甘めの味噌はトーストしてから塗るとバターの代わりになりますし、塩味がある味噌は塗ってから焼くとチーズのような風味が感じられます。
これまでの味噌に対する先入観を捨てて、もっと自由に楽しんでいただきたいですね。

<プロフィール>
岩木みさき

1988年神奈川県出身。実践料理研究・みそ探訪家。日々の中で実践できることが健康につながると考え、レシピ開発やセミナー講師など、実践力を身につけられる料理教室misa-kitchenを主催。著書に「みその教科書」(エクスナレッジ)、「1分 美肌みそ汁 美白・潤い・ハリUP!腸活で体内クレンジング」(学研プラス)などがある。

 

執筆者プロフィール

  • 本稿は、執筆者が本人の責任において制作し内容・感想等を記載したものであり、SBI新生銀行が特定の金融商品の売買や記事の中で掲載されている物品、店舗等を勧誘・推奨するものではありません。
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