フェムテック商材開発&3児の母に聞く、仕事と家庭どう向き合った?

30・40代ともなると、「仕事に子育てに大忙し!」という読者の方も多いのではないかと思います。
立ち止まって考えるような余裕があまりないまま日々が過ぎていく一方で、ふとしたときに今の生き方を「このままでいいのかしら」と悩むような瞬間もあるかもしれません。

今回は、そんな悩める30・40代の女性に向けて、美容やフェムテック分野の女性起業家で、3児の母でもある山本未奈子さんに、ご自身の仕事や私生活に関する体験談を伺いました。起業もして3人のお子さんも育てていると聞くとスーパーウーマンのように感じられますが、実際には山本さん自身も、30代から40代にかけて悩みながら仕事にプライベートに向き合う毎日だそうです。
インタビューでは、何でも気さくに答えてくださった山本さん。女性として母としてのその足跡は、たくさんの示唆と勇気を与えてくれるはずです。

「女性を幸せにする」を理念に、2つの会社を舵取り

――まずは、現在山本さんが取り組んでいらっしゃる事業について伺えますか?

山本さん(以下、敬称略):
現在、私は2つの会社を経営しているのですが 、2009年にMNC New York株式会社を設立して以降、女性が自分らしく、自由に人生を謳歌できる社会を創りたいという思いで取り組んできました。
具体的には、その人らしい健康的な美しさを叶える化粧品やサプリメントを展開する「SIMPLISSE(シンプリス)」、暮らしや自己表現に喜びをもたらしたいという思いを込めたファッションブランド「CALLi(キャリー)」を展開しています。

また、株式会社Be-A Japanでは、女性特有の悩みに寄り添う吸水ショーツブランド「B-A(ベア)」も手掛けています。

――最近、サニタリー用の吸水ショーツ「B-Aベア)」が話題ですね。

山本:
ありがとうございます。「B-Aベア)」は ショーツ自体が液体を吸水し、これ1枚穿くだけで1日過ごすことができる、超吸収型サニタリーショーツなんですよ。一般的に多いと言われる2日目の平均量と比較すると約3倍にあたる、約125ml*もの液体を吸水することができるんです。
最近、吸水量をさらに増やし、穿き心地にもこだわった新モデルを発売しました。

――これも、ご自身の体験に基づいた商品なのでしょうか。開発のきっかけを教えてください。

山本:
はい、女性は日常生活で、生涯にわたって女性ホルモンの影響を受け続けますよね。私自身も最近更年期に入り、これまでになかった心身のつらい症状に悩まされるようになりました。

「女性特有の悩みに対して、私たちができることはないか」と考えたときに、女性社員を主体とする当社では、毎日誰かしらが生理のつらさを抱えて過ごしていることに気づいたんです。
社員に具体的な悩みを聞いてみたところ、漏れやにおいに関する不安が多くを占めました。当社は白を基調としたオフィスで、会議室の椅子も白なので、「汚してしまったらどうしよう」と落ち着かない気分でミーティングに加わっていた人も多かったようです。

衝撃的だったのは、使い終わった生理用品を社内のトイレに捨てずに、においが出ないように包んで持ち帰っていると聞いたこと。他の人を嫌な気持ちにさせないようにとの配慮なのですが、女性のための商品を開発しているにもかかわらず、生理が今なお恥ずかしいこととしてタブー視されていることに大きな課題を感じました。 また、当時16歳の長女から、友達同士で生理用品を貸し借りする際、上着の袖部分に隠して受け渡ししていると聞いたのにも驚きましたね。「私たちが高校生の頃と、何も変わってないじゃない!」って。

――確かに、「性や生理に関することは恥ずかしいこと」という意識は根強く残っていますよね。

山本:
そうなんです。でも、そうした意識があると、女性の可能性はますます制限されてしまいます。 忙しく働く女性たちが、女性特有の悩みによって夢やキャリアをあきらめてしまうことがないように。また、周期が安定しない10代の女子たちが、女性ならではの悩みに振り回されずに過ごせるように。そんな思いで、フェムテックの領域に足を踏み入れました。
サニタリー期間中も、サニタリー用品の交換に気をとられず、好きな服を着ていきいきと仕事や生活を楽しんでほしいと思っています。

「好きなこと」を仕事にして、人生が一変

――少し過去に戻って、山本さんご自身のキャリアの変遷についてお聞きしたいと思います。当初はまったく異なる業界からキャリアをスタートされたそうですね。

山本:
UCL(ロンドン大学)を卒業後に帰国し、大手総合商社に勤めました。モチベーション高く就職したものの、当時は男性が外で仕事を取ってきて、女性は中でそのサポートをするという役割分担が一般的。私も自動的に一般職に配属され、商品や物資を輸出入するための契約書類作成、船会社への船積み手配などの事務作業を主に担当していました。

「忙しい部署で働きたいです」とみずから志願したこともあって、一日中ひたすら書類を作成し続けることも珍しくなかったですね。長時間労働も普通の時代だったので、残業、残業の日々でした。

――仕事にやりがいは感じていましたか?

山本:
私は元々、外に出て人と話すのが好きなタイプ。淡々と書類を作成する事務作業は、正直言って苦手な領域でした。自分を鼓舞して仕事をこなしていましたが、知らず知らずのうちに疲労とストレスが溜まって、ついに体調を崩してしまったんです。
それでも、なんとか3年がんばり、証券会社に転職しました。アシスタントとして入社した後、外務員登録資格試験を受けて合格し、デリバティブセールスとして充実した毎日を過ごしていましたね。

――そこから証券会社でキャリアを重ねていくのかな、と思いますが…。

山本:
意外かもしれませんが、3年で寿退社しているんですよ。結婚の翌年には長女が生まれ、すっかり専業主婦として落ち着いていました。
それはそれで楽しくやれていると思っていたんですが、夫が仕事のあいだは一人で子供と向き合い、家事をする毎日が続いていたある日、「もう一度社会に戻って働きたい」と猛然と思ったんです。

思えば、商社時代と同じような状態だったのかもしれません。孤独にルーティーンをこなすという苦手な領域に身を置き続けているうちに、だんだん「自分」がわからなくなってきてしまって…。
だからといって安易に復帰すれば、同じ失敗を繰り返すことになりかねません。「どうしたらいいんだろう」とモヤモヤしていたら、当時の夫が言ったんです。「そんなに美容が好きなら、それを仕事にしてみたらいいんじゃない?」と。

――意外な声がけでしたか?

山本:
そうですね。私はその頃から、自他ともに認める美容オタクでしたが、仕事にしようと思ったことは一度もありませんでした。「美容を仕事にするなんて、そんな方法があったのか!」と、すごく驚いたのを覚えています。

当時はちょうど夫の転勤でニューヨークにいたので、美容の本場で学ぶことから始めようと、ニューヨーク有数の美容学校L’atelier Esthetiqueへ入学し、育児のかたわら学生生活をスタートさせました。
周りの支えもあって首席で卒業できたことでお声がけいただいて、しばらくは卒業校で教鞭もとっていたんですよ。

――好きなことにフォーカスして学んでみて、山本さんの中では何が変わりましたか?

山本:
やっぱり、好きなことは楽しいですね。最新の皮膚科学をもとに体系化された知識が身につくことで、それまで独自にやっていた美容の正解が見えてきて、美容を理論として理解できるようになりました。
美容に関するブログを書くようになったのもこの頃です。それが編集者さんの目にとまって、書籍なども出版させていただきました。

といっても、今あらためて見ると、当時出した書籍はなんとなく気恥ずかしくて。学んだことを発信できるのがうれしくて、勘違いしていたというか、調子にのっていたというか…。
でも、あの頃があったからこそ、女性の身近な悩みに伴走するような商品を作りたいと思うようになったのかもしれません。

落ち込みそうになったら、感情のフィルターを切り替える

――起業してからは、順風満帆だったのでしょうか?

山本:
いいえ、全然!失敗したときやうまくいかないとき、よく「次に高く跳ぶために、低くしゃがむ必要があるんだよ」とかって励ますじゃないですか。私のキャリアを振り返ると、しゃがんでばかりですよ(笑)。

経営の知識がまったくないまま起業に踏み切り、事業がどうにか拡大路線に乗った頃、中途入社の社員が一斉に辞めたこともありました。気心の知れた創業メンバーに新しい社員が次々と加わる中、人事評価や福利厚生といった制度の構築まで手が回らず、経営方針に疑問を持った社員たちの心が離れてしまったんです。
ある社員には、「経営のコンサルタントを入れたほうがいいんじゃないですか」と言われたこともあります。自分が悪いとはいえ、これはショックでしたね。ただ、その厳しい言葉のおかげで自分の経営を客観的に見直し、フルフレックス制を導入したり、社員と話す機会を増やしたりと、環境の充実を図ることができたのも確かです。

その後も、大なり小なりいろいろな出来事がありましたが、試練ともいえるつらいことがあった後は、会社も、私もぐっと成長している気がします。しゃがんだ分だけ高く跳べるのは、本当かもしれないですね。

――落ち込んだとき、どんな風に気持ちを切り替えているのでしょう。

山本:
私は「いつも前向きで自信がありそう」と言われることが多いのですが、実はそんなに勇敢なほうではないんです。仕事でも、子育てでも、「ちゃんとやれているのかな」「これでいいのかな」と不安になりますし、悩むこともたくさんあります。

でも、最近コーチングを受けて、少し楽になる方法を身につけたんですよ。
それは、「感情のフィルター」を書き換えること。悲しみやつらさに押しつぶされそうなとき、どんどん負の感情に流されていくのではなく、楽しい話をしたり、幸せな気持ちになれる映画を観たりして、主体的に感情を書き換えてしまうんです。
これを繰り返していると、自分の感情をポジティブにコントロールしやすくなり、失敗しても「ああ、ターニングポイントが来たんだな」と前向きに捉えられるようになります。

――思考に良い癖をつけるようなイメージですね。

山本:
そうですね。嫌なことや納得できないことがあったときも同じです。そういう感情は、放っておけばいずれ薄れていくものですが、人はつい誰かに話して「嫌な気持ち」をわかってほしくなるもの。
そうすると、話しているうちにどんどん感情が高ぶって、嫌な気持ちも倍増します。相手が聞き上手だったりするともう大変。負のループから抜け出せなくなってしまいますよね。

感情のフィルターを上手に書き換えて、早めに次の一歩を踏み出すことが、マイナスの感情にとらわれない秘訣だと思います。

知識と工夫次第で、ホルモンバランスの変化も乗り越えられる

――3人(取材時、18歳・10歳・9歳)のお子さんとは、どんな風に向き合っていますか?

山本:
毎日忙しく働いていると、一日の中で子供といられる時間はごくわずか。だから、いっしょに過ごす時間のクオリティをどうやって上げるかをいつも考えています。子供の話にはとことん耳を傾けるし、遊ぶときは全力で遊ぶ。スノーボードも自転車も、全部子供と同じ目線で楽しみます。
何よりも大切にしているのは、「ママは、いつでもみんなのことを思っているよ」ということを、言葉にして伝えること。離れていても近くにいても、それさえ伝わっていれば大丈夫だと信じています。

コロナ禍でテレワークが主体になったことで、以前より子供と向き合う時間は増えました。ワーケーションなどをうまく使って、家族みんなが満足できる時間の使い方を考えていきたいですね。

――SNSでは、ご自身の体調との向き合い方も積極的に発信していらっしゃいます。最後に、キャリアに私生活に邁進する読者女性に向けて、メッセージをいただけますか。

山本:
私の場合、更年期に入ってホットフラッシュや抑うつ感が現れるようになり、自分でもどうしていいかわからない時期が続きました。でも、婦人科を受診して、ホルモン補充療法(HRT)を始めたら、だいぶ楽になってきたんですよ。正しい知識を持って早めに対処すれば、ホルモンの変化ともうまく付き合いながら働き続けられると実感した出来事でした。

最近では、女性の一生に伴走してくれるようなフェムテック商品もたくさん登場しています。自分の中で抱え込みすぎずに、医療の力やテクノロジーの力を活用すれば、ホルモンに振り回されることなくいきいきと輝き続けることもできるはずです。年を重ねたからこそできることも多くあります。
また、年を重ねるほど体力も大切!私は毎朝ベッド脇に置いたエクササイズバイクで運動することを習慣にしています。体力を十分につけて、学び続けていくことを大切にしてくださいね。

※2022年3月に取材しました。

<プロフィール>
山本未奈子

MNC New York株式会社 代表取締役/株式会社Be-A Japan 代表取締役/NY州認定ビューティーセラピスト/英国ITEC認定国際ビューティースペシャリスト

1975年生まれ。MNC New York株式会社ではビューティーブランドの「SIMPLISSE(シンプリス)」とファッションブランド「CALLi(キャリー)」を、株式会社Be-A Japanでは吸水ショーツブランド「B-A(ベア)」を展開。美容家としては女性誌やSNSなどで自身の美容理論を発信するなど、幅広く活躍している。

 

執筆者プロフィール

  • 本稿は、執筆者が本人の責任において制作し内容・感想等を記載したものであり、SBI新生銀行が特定の金融商品の売買や記事の中で掲載されている物品、店舗等を勧誘・推奨するものではありません。
  • 本資料は情報提供を目的としたものであり、SBI新生銀行の投資方針や相場説等を示唆するものではありません。
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