園芸王子・三上真史さんが教える、失敗してもいい園芸の楽しみ方

植物には癒やしの効果があると昔からいわれていることですが、コロナ禍を経て、さらにその思いを強くした人も多いのではないでしょうか。実際、最近では花屋さんが若い女性で混雑している様子を見かけたり、趣味として鉢植えやガーデニングを始めたりしたという人も増えたといいます。

そこで、YouTubeやイベントなどを通じて園芸の魅力を発信している、園芸王子こと三上真史さんにお話を伺いました。園芸初心者におすすめの植物やそろえるべき道具といった実践的なお話のほか、植物を育てることによる意外な効果などを聞いたら、さっそく園芸店に行きたくなるはず!

園芸は人生と同じ。失敗から何を学ぶかが重要なんです

――コロナ禍で園芸を始めた方が増えたと聞きますが、三上さんもそれは実感されていますか?

三上さん(以下、敬称略):
おうち時間を楽しもうというところから、観葉植物などを中心に園芸を始められた方が一気に増えたという印象です。それに、今まではご年配の方が多かったんですが、最近は若い方も増えてきて。老若男女問わず、幅広い世代の方々に植物の魅力が伝わっているというのは本当にうれしいです。僕からしたら、「ようやく気づいていただけたか!」という感じなんですけど(笑)。

――そもそも、三上さんが園芸にハマったきっかけは何だったんですか?

三上:
きっかけというのは特になくて、ずっと当たり前にやってきたことなんです。両親が植物好きで、実家の庭で育てていたので、小さい頃から僕も手伝っていました。両親によると、僕が最初に興味を持ったのはパンジーで、「この花は何で顔みたいな模様なの?」って聞いたらしいです。僕にとってはパンジーも遊び道具というか、まず楽しいっていう気持ちが最初にあったんですよね。

――その流れでご自身でも植物を育てるようになったんですか?

三上:
大学進学をきっかけに実家の新潟から上京してきて、東京って「ここまで植物がないのか!」って衝撃を受けちゃって。だから、休日は緑を求めて電車で郊外へ旅していたんです。
あるとき、秩父へ行く車窓から見えた芝桜が本当にきれいで、あらためて植物の力ってすごいなって感動して。当時はアパート暮らしだったんですけど、ベランダ園芸でもいいからやってみようって思って始めました。

――当時、若い男性の趣味としては、園芸って珍しいですよね。

三上:
そうですね。「轟轟戦隊ボウケンジャー」に出演していたときに、よくイベントや取材で「ハマっているものは?」って聞かれるんですけど、いつも「園芸」って答えていました。そうしたら、ちょうど撮影が終わったときに、NHKの「趣味の園芸」からお声掛けいただいてうれしかったですね。
歴代最長の10年もナビゲーターをやらせていただいて、それで卒業かと思いきや、今は講師として出演させてもらっています。

――MCから講師にランクアップされたんですね。やっぱり勉強されたんですか?

三上:
ただ楽しくて研究しているだけで、特に勉強とは思っていないんですが。マネージャーからは、「ただの園芸オタク」っていわれています(笑)。でもうれしいのが、元々マネージャーはまったく植物に興味のない人だったんですけど、今では園芸にめちゃくちゃハマってくれて。そういう人をどんどん増やしていきたいなって思っています。

――園芸をやらない理由として、「植物を枯らしたらかわいそう」と思っている人が多いと思うんです。三上さんも枯らしてしまった経験はありますか?

三上:
もちろんです。植物には申し訳ないのですが、今でも失敗することはあります。でも、それでやめちゃうのは本当にもったいなくて。そもそも植物は枯れることによって、次の代への栄養になって橋渡ししていくもの。「一年草」といって、日本の気候では夏や冬を越えられずに枯れてしまう植物もたくさんあるんです。
だから、枯れたのは育て方ではなくて、気候のせいってことも多くて。園芸って本当に人生といっしょで、すべて成功はしないんです。でも、失敗から学んで次への糧にしていけば、植物も喜んでくれると思うんですよね。だから、失敗してもいいんです!

――三上さんがやってしまった失敗で、印象に残っているものはありますか?

三上:
失敗というか、あきらめちゃいけないんだなって教わったのはアジサイですね。見た目は完全に枯れてしまって、芽吹くはずの時期にも変化がなくて、一応水をやってはいたものの、もうダメだなって思っていたんです。そうしたら、あるとき突然芽吹いて、むしろ前より力強く咲いてくれました。
厳しいときも乗り越えられるように、実は大地にしっかり根を張っていたんだなって。その姿にすごく勇気付けられました。

初心者は一年草から始めるのがおすすめ。植物を育てる人はみんながヒーローです

――園芸ビギナーが育てやすい、おすすめの植物を教えてください。

三上:
パンジーとビオラですね。というのも、どうしても初心者の方は枯らしてしまうのが怖いじゃないですか。でも、パンジーとビオラって、どうしても夏には枯れちゃうんです。品種改良によって秋から春まで長く楽しめるようになったんですけど、元々の性質で夏の暑さや湿度には弱くて。
夏になったら枯れるってわかっていたら、ちょっと気楽に育てられませんか?だから、パンジー、ビオラに限らず、一年草から始めることをおすすめしています。

黄色いパンジー

ビオラ

――冬の季節に育て始めるとしたら、おすすめの植物はありますか?

三上:
冬なら、ガーデンシクラメンもいいですね。シクラメンって冬の花なのに寒さに弱くて、室内で育てる植物なんですけど、それを屋外に植えたいっていうところから生まれたのがガーデンシクラメンで。関東の気候でしたら、冬でも外に植えられます。春まで長く楽しんでいただけますし、さらにうまく育てられれば、夏も超えて毎年楽しむことができる花なんです。次の年も咲いたときの達成感はひとしおですよ。これを味わったら絶対園芸にハマりますから!

――なるべく初期投資は抑えたいのですが、初心者がそろえたほうがいい道具を教えてください。

三上:
だいたいの道具は100円ショップで手に入りますから、安心してください。ただ、ハサミだけはいいものを使っていただいたほうがいいと思います。切れ味が悪いと、それだけで植物にとってストレスになってしまいます。
植物を切るってかわいそうと思うかもしれませんが、実はすごく大事なこと。切ったほうが、断然収穫量が増えるし、元気に育ってくれるんです。でも、普段使っている紙用のハサミなどで切ってしまうと、そこから雑菌が入ったり、切り口がつぶれて病気になったりしてしまうことも。だから、清潔でしっかり切れるハサミを使っていただきたいですね。

――三上さんはガーデニング用のハサミもプロデュースされていますよね。

三上:
はい。軽いし、切れ味がいいし、サビないので、昔から愛用している新潟の燕三条にある「高儀」というメーカーのハサミがあって。自分でハサミを作るとなったとき、絶対にここで作りたいって思って、そのメーカーさんにお願いして作っていただきました。
道具に愛着があると、園芸がもっと楽しくなりますから、皆さんもお気に入りのグッズを見つけてほしいですね。

三上さんプロデュースの「ガーデニングはさみ」

――確かに形から入ると、テンションが上がるかもしれませんね。

三上:
実は「轟轟戦隊ボウケンジャー」をやっていた頃から温めてきた構想なんですけど、「ガーデンジャー」っていう園芸用品のブランドを立ち上げたんです。「轟轟戦隊ボウケンジャー」をやっていたときは僕が地球を守っていたんですけど(笑)、僕は植物を育てている人は、みんながヒーローだと思っているんです。
みんなが1鉢でも緑を育めば、それだけ地球を緑化できるということ。子供たちにも園芸を楽しむヒーローになってほしいので、親子でおそろいの道具なんかも作っていきたいですね。

いつも通る道も楽しい遊び場に。親子で園芸を楽しんでほしい

――親子で園芸を楽しむって素敵ですね。

三上:
都会だとなかなか難しいけど、子供たちって植物とふれ合えば、絶対楽しいって思ってくれるんです。「花育」っていうんですけど、花を育てて、植物とふれ合って、心も育んでいく。そういうきっかけづくりをしていきたいなと思っています。
横浜で「花と緑のアンバサダー」として里山ガーデンを作っているんですが、そこで小学生といっしょに植物を植える活動をしていて。いろいろな植物を用意して、「自由に選んでいいよ」って言ったら、カラフルな色が人気かと思いきや、白い花が人気だったんです。理由を聞くと、「何の色にでも合うから」って。子供の発想力って僕らの想像を軽く超えていくから、こちらが教わることも多い。だから、親子いっしょに園芸を楽しんでほしいです。

――ただ、親があまり園芸に詳しくないと、子供に花の名前を聞かれたときに答えられないことも…。

三上:
それはAIを駆使し、携帯のカメラで撮ると植物の名前が出てくる「GreenSnap」というアプリでわかりますから、使ってみてください。僕の子供が今3歳なんですが、道に咲いている草花の名前を聞かれることも多くて。そこで答えてあげたり、いっしょに興味を持ってあげたりすると、普段の散歩道も、すべての場所がすごく楽しい遊び場になりますよ。

――今後の活動の目標はありますか?

三上:
YouTubeを始めて、植物のことを知りたいけど、どうしたらいいかわからないっていう人が多いことがわかりました。だから、園芸になじみのない方にも、園芸って気楽に楽しめるものだよって知ってもらう手助けができたらと思っています。
植物って、予想とは全然違う方向へ育ったり、ダメかと思ったらきれいに咲いてくれたり、「生きている」っていうことを実感できるのが魅力なんです。自粛期間中、先程お話しした里山ガーデンは閉鎖されていましたが、そんな大変な時期でも花は咲き誇っていました。その姿には本当に感動したし、勇気付けられたんです。だから、人間にとって植物はなくてはならないもので、言葉にできないような力があるってことを伝えていきたいですね。

――園芸に興味が出てきた読者もいると思うので、そんな方にメッセージをお願いします。

三上:
僕は、ファイナンシャルプランナーの資格も持っているんですが、資産を育てるスキルと植物を育てるスキルって、実はすごく近いなと感じています。どちらも、お金や植物をモノとして捉えるんじゃなくて、きちんと知識を持って、愛情を込めて時間をかけて育てないとダメなんです。
だから、植物を育てることで、さまざまなことを育てるスキルも身につけていただけたらと思います。

<プロフィール>
三上真史

俳優、園芸デザイナー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。1983年、新潟県生まれ。2006年、ドラマ「轟轟戦隊ボウケンジャー」のボウケンブルー役に起用される。NHK「趣味の園芸」のナビゲーターを10年勤め、現在は講師として出演。園芸とフラワーデザイン両方の資格を持つ園芸デザイナーとして活躍中。

三上真史の趣味は園芸ちゃんねる - YouTube

 

執筆者プロフィール

  • 本稿は、執筆者が本人の責任において制作し内容・感想等を記載したものであり、SBI新生銀行が特定の金融商品の売買や記事の中で掲載されている物品、店舗等を勧誘・推奨するものではありません。
  • 本資料は情報提供を目的としたものであり、SBI新生銀行の投資方針や相場説等を示唆するものではありません。
  • 金融商品取引を検討される場合には、別途当該金融商品の資料を良くお読みいただき、充分にご理解されたうえで、お客さまご自身の責任と判断でなさるようお願いいたします。
  • 上記資料は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性をSBI新生銀行が保証するものではありません。

前へ

アーリーリタイアとは?第二の人生を早めに始める生き方

次へ

投資の失敗とは損失ではない?知っておきたい失敗を招く行動と考え方