「ととのう」って何?正しくサウナに入ると心も体も気持ちいい!

昨今、ムーブメントとなりつつあるサウナ。昔は銭湯でおじさんが入るもの…という印象が強かったのですが、最近では「サ活(サウナ活動)」という言葉も聞かれるようになり、20代~30代の若者や女性層にも急速に広まってきました。その要因は、ドラマや漫画といったメディアミックス展開のほか、サウナで得られる「ととのう」という感覚が、ブームを牽引しているようです。
しかし、現役の医師であり、日本サウナ学会代表理事でもある加藤容崇さんによると、まだまだサウナの正しい入り方が理解されていないとのこと。果たして、正しいサウナの入り方とは?サウナのすばらしい効果と、「ととのう」の正体に迫ります!

そのサウナの入り方、間違っていませんか?

──早速ですが、サウナの健康効果について教えてください。

加藤さん(以下、敬称略):
心筋梗塞の予防効果や認知症リスクの低減、血管拡張による血圧の低下、あとはうつ病を含む精神疾患にも効果があるという報告があります。いろいろな健康効果が実証されていますが、基本的には「気持ち良い」の結果として健康につながることが、サウナの最大の効果だといえますね。

──サウナ初心者にとって、どうやって入るのが正しいのか、漠然としています。

加藤:
そもそも日本では、正しいサウナの入り方がきちんと伝わっていなかったんです。例えば、「サウナで汗をかいてデトックス」なんて大嘘ですからね。汗は基本的に、体温調節の機能しかありません。また、我慢比べみたいに、ずっとサウナと水風呂を往復する入り方も意味がありません。
ほかにも、「サウナで酒を抜きにいく」という方がいるじゃないですか。あれは、脱水症状になって危険ですから、アルコールを飲んだ状態でサウナに行くのは絶対ダメなんですよ。

──どれもよく見かける光景ですね。

加藤:
例えば、サウナ発祥の地であるフィンランドでは、小さい頃から家族でサウナに入ります。そのため、正しいサウナの使い方をみんなよく知っているんです。一方で、日本は我流のまま広がってしまって、体に悪い使い方をするケースが後を絶ちません。サウナで芸能人が倒れた…なんてニュースが流れると悪い印象しか持たないじゃないですか。でも、それはサウナが悪いのではなくて、正しいサウナの入り方が伝わっていなかったからなんです。だから、せっかくの健康効果にもつながらない状況になっていました。
ただ、最近になって医学的にも裏がとれたことで、曖昧だったサウナの健康効果が伝えやすくなりました。そこで、私は日本サウナ学会を設立し、サウナによる健康効果の研究や情報発信を行うことにしたのです。

正しい入り方のカギを握るのは時間配分とコンディション

──それでは、正しいサウナの入り方を教えてください。

加藤:
「サウナ、水風呂、休憩」を1セットとして、3セット行うのが標準的な入り方です。まず、サウナに5~10分、水風呂に1~2分、休憩に5~10分という時間配分を目安にしてください。休憩は、できれば外気にふれられる場所のほうがおすすめです。
また、サウナに入る前のコンディションも大切です。一番良くないのは、飲酒後などの脱水状態で入ることですね。脱水になると血液が濃くなって固まりやすくなり、心臓への負担も増えます。「体を絞りたい」「むくみを取りたい」などの理由で、ひたすら汗をかいて水分をとらないのもNGです。
サウナに入るとだいたい、500〜1,000ccぐらいの水分が汗となって体から排出されます。サウナに入る前に、まずはコップに2~3杯の水を飲みましょう。その後は1セットごとにコップに2~3杯ずつ飲んで、全体で合計1L弱ぐらい飲むことをおすすめします。

──サウナ、水風呂、休憩それぞれの時間に差がありますね。

加藤:
この時間配分はあくまで目安で、明確に決まっているわけではありません。特に、サウナ室にいる時間に関しては、施設による温度の違いやご自身の体調によって、調整していただいて構いません。
私が推奨しているのは、心拍数を図るという方法です。サウナは、軽度の運動と同程度の心臓への負担がかかりますので、あまりしんどくないと感じる程度の運動時の心拍数が基準になります。ランニングをした後や軽くスポーツを行ったときなど、汗をかく頃に手首や首筋に指をあてて、1分間でどれくらい脈を打つか心拍のリズムを覚えておきましょう。そのリズムを超えたら、サウナ室から出るようにしてください。
ただ、ご高齢の方の場合は心拍数の反応が鈍く、上がり切らない方もいます。最終的には、「熱いなぁ」と感じたら出るべきですね。

──サウナというと、水風呂は冷たくて苦手という人は多いようですが、対策はありますか?

加藤:
水風呂が冷たくて入れないというのは、サウナで体全体を十分に温めていないからですね。水風呂は足から入ると思うのですが、足はサウナでも一番温まりづらい箇所なんです。なぜかといえば、サウナでも一番温度の低い位置に足を置いているからですね。頭と足との温度差は、約15℃にもなるといわれています。

──全体が温まっていることが大事なんですね。

加藤:
そうです。一方で顔は、温感センサーが一番敏感で、熱さを感じやすい箇所なのですが、これも罠です。顔が火照ったことで、つい「体全体が温まった」と思い込んでしまう。体全体の温度差をなくすために、頭からタオルをかぶって顔を覆うようにし、足は体と同じ高さになるよう、体育座りやあぐらをかくなどするといいでしょうね。

──水風呂に入る際の注意点はありますか?

加藤:
息をこらえるのは絶対ダメです。冷たいからといってウーッと息を止めて力を入れると、血圧が上がってしまいますからね。
息をゆっくり吐きながら、さらに小さい声で「気持ちいい…」って言いながら入ってください。

──それは何か効果があるのでしょうか…?

加藤:
もちろんありますよ!ポジティブな気持ちでいると、自律神経の反応が早くなるという論文もありますから、自己暗示をかけたほうがいいんです。
周囲からも「アイツやるな…」って思われますからね(笑)。

サウナのメインは休憩!ここで「ととのう」を体感できる

──休憩時間は、サウナと同じぐらい時間を取っているんですね。

加藤:
サウナといえば、皆さんサウナ室にいることがメインだと思うじゃないですか?でも、サウナも水風呂も準備みたいなもので、実は休憩が一番大切なんです。
とても熱くて過酷なサウナの環境から、すぐ冷たい水風呂に入るというのは、人間の体にとって非常にストレスを感じる行為なんです。そんな、極端な環境に身を置くとどうなるかといえば、交感神経が優位になって緊張状態になる。そこから休憩に入ると、体は危機を脱したと感じて、副交感神経が優位になり、通常では得られないほど深くリラックスした状態になるんですよ。これがいわゆる、「ととのう」という状態です。

体感としてわかりやすいのは、小学校のプール学習の後ですね。プールの後って、「頭に魔法がかかっているんじゃないか?」って思うほど眠くなりますよね。
これは、暑い日に冷たいプールで運動すると交感神経が優位になり、その後はとてもリラックスした状態になるからです。これがまさに、「ととのう」なんです。

「ととのう」は日本だから生まれた感覚

──「ととのう」という状態は、誰でも共通した感覚として存在するのでしょうか?

加藤:
そうですね。以前、脳科学的に、どのような反応が起こるのか調べたことがあります。
超高精度の脳波計を使って、30人ぐらいに協力していただき、サウナ前、サウナ後の脳の状態を計測したことがあるのですが、やはり一致した反応を示しました。

──人によって、ととのいやすさ、ととのいにくさはあるのでしょうか?

加藤:
自律神経が乱れている人、元気じゃない人、疲れている人のほうがととのいやすいですね。私は反対に、サウナに入る前からととのっているので、「ととのう」を強く実感することは少ないです。
それは、健康であることの証明でもあるのですが、疲れている人がサウナでとても気持ち良さそうになるのを見ると、すごくうらやましかったですよ(笑)。

──「ととのう」という言葉が昨今のサウナブームを牽引している印象がありますね。

加藤:
今、「ととのう」を国際語にしようと思って研究を開始するところです。ぜひ、フィンランド人や世界中の“サウナー”に「ととのった」と言わせたいと思っています。

──フィンランドでは、そうした「ととのう」状態を示す言葉はないのでしょうか?

加藤:
聞かないですね。フィンランドでは、サウナを出た後の体の冷まし方が日本とは異なるため、「ととのう」という共通の感覚を感じることは少ないようです。風呂文化があって水が豊富な日本では、年間を通して15℃から19℃の水風呂が用意でき、誰でも水風呂に入ることができる。こうした状況があるおかげで、日本はサウナによって「ととのう」ことが成立しやすい環境にあると感じます。

──フィンランド発祥なのに、日本独自のサウナ文化が確立されているというのはおもしろいですね。

加藤:
「ととのう」は、日本ならではの独特の文化といえるでしょうね。今、新たに、「ととのう」状態を数値として可視化する試みを始めています。それによって、どんな入り方が自分に適しているのか、わかるようになると思うんです。
例えば、サウナは短めが良いとか、水風呂は長めに入るとか。自分なりの最適な状態を導き出すのは興味深いと思うんですよね。あとはゲーム感覚的に、他人とデータを比較してみるのもおもしろい。「楽しみながら健康につながる」というスタンスが打ち出しやすいので、現在いろいろと試しているところです。

気持ち良い習慣が健康につながる

──そもそも加藤さんがサウナに興味を持ったきっかけをお聞かせください。

加藤:
私の医師としての専門は膵臓がんですが、これは治る兆しすら見えない難しい病気です。先端のテクノロジーをもってしても、将来的に治る可能性すら想像することができません。非常に厄介ながんです。治すことが難しいとすれば、体を少しでも健康に保ち、予防することが一番賢い選択になります。
ただ、予防にお金をかけてもらうのはなかなか難しい。病気になったらお金を払う人はたくさんいますが、「1日1,000円、健康のために払いますか?」と聞かれて実践できる人はなかなかいません。そこで、非常に身近なものを啓蒙することで、健康の維持や病気の予防につながらないだろうかと考えまして、サウナに着目しました。
元々、がんの領域で培った最新のサイエンスを使って、伝統的な健康習慣を解析することで、「病気の予防につなげる」というのが私のスタンスです。そこに、サウナがハマったということですね。

──昨今のサウナブームを、加藤さんはどのように感じていますか?

加藤:
私はブームとは思っていません。サウナは元々存在していたものですし、今まで興味がなかった人に広がってきているという認識です。もちろん、最近のメディアミックス作品の登場や、「ととのう」という概念が一般化してきていることは事実なので、これから一般的な健康インフラとしてサウナが認識されれば良いと思っています。

──これから「ととのう」を体験したいサウナ初心者は、どんな気持ちでサウナに臨めばいいでしょうか?

加藤:
まずは、「ととのう」という感覚を味わっていただきたいですね。「ととのう」状態が気持ち良いとか、おもしろそうという部分をきっかけにして、自然とサウナになじんでもらうのが理想です。
「健康になるためにサウナに行く」では続きませんから、まずは気持ち良くととのいにいくことを目的にして、結果的に健康になるのがいいですね。

<プロフィール>
加藤 容崇(かとう やすたか)

群馬県出身。慶慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット特任助教・医師、社会医療法人北斗 北斗病院医師、日本サウナ学会代表理事。専門はがんの遺伝子検査と研究。サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新の科学で解析することを第二の専門としている。著書に「医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?」(ダイヤモンド社)がある。

 

執筆者プロフィール

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