住宅ローンの借入れ平均額は?無理なく返せる返済額を見極めよう
住宅ローンを利用する際、「いくらまでなら借りられるのか」「いくらまでなら無理なく返していけるのか」が気になる人も多いでしょう。住宅ローンは、何十年もかけて返済することも多いものです。将来的に無理なく返していける金額がいくらなのか、十分に検討しなければなりません。
今回は、借入れや返済額の平均のほか、自分にとって無理のない金額がいくらなのかを考える際のポイントをご紹介します。
住宅購入はローンを組むのが普通?それとも現金一括?
マンションや一戸建てといった住宅は非常に高額な買い物ですから、住宅ローンを組んで購入する人も多くいます。
国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査」によると、住宅購入の際に住宅ローンを利用している人の割合は、それぞれ以下のようになっています。
<住宅ローンの有無>
新築 注文住宅 | 分譲 戸建て住宅 | 分譲 マンション | 中古 戸建て住宅 | 中古 マンション | |
---|---|---|---|---|---|
住宅ローンあり | 84.1% | 70.9% | 63.2% | 55.2% | 53.5% |
住宅ローンなし | 11.7% | 8.1% | 20.0% | 22.8% | 26.1% |
新築・分譲の場合は約7~8割、中古の場合でも5割以上が住宅ローンを利用していることがわかります。
毎月の住宅ローン返済額はどのくらい?
住宅市場動向調査によると、月の返済額の平均は下記のとおりです。
<住宅ローンの平均返済額>
注文住宅 | 11万6,166円(年間139万4,000円) |
分譲戸建て住宅 | 10万5,000円(年間126万円) |
分譲マンション | 12万5,333円(年間150万4,000円) |
中古戸建て住宅 | 8万3,083円(年間99万7,000円) |
中古マンション | 8万4,416円(年間101万3,000円) |
注文住宅と分譲マンションの返済平均額が高くなっていますが、どちらも購入価額が高額なため、月の返済額も高くなっています。
住宅ローン返済期間の平均は?
住宅ローンの月々の返済額は、借入金額と借入期間によって変動します。借入期間を長くすれば、それだけ月々の負担を減らすことができますが、その分利息がかかりますし、長いあいだ返済が続くことになります。
どのくらいの期間で住宅ローンを借りている人が多いのか、住宅市場動向調査より平均を見てみましょう。
<住宅ローンの平均借入期間>
注文住宅(建築費のみ) | 32.9年 |
注文住宅(土地購入費のみ) | 34.2年 |
分譲戸建て住宅 | 34.1年 |
分譲マンション | 32年 |
中古戸建て住宅 | 29.2年 |
中古マンション | 29.9年 |
分譲の場合は30年以上、中古でも29年前後の住宅ローンを組んでいる人が多いことがわかります。
新築と中古で多少の差はありますが、どちらの場合でも、長期間のローンを組む人が多い傾向です。なお、この調査は新たに住宅を購入した人に対して、返済期間を質問する形で行われているため、繰上返済が行われた場合、最終的な返済期間は上記よりも短くなります。
一度組んだローンの返済期間を延ばすのは、縮めるのに比べて困難ですから、当初の借入期間は比較的余裕を持って設定する人も多いです。
月々の返済負担を大きくしすぎると、不意の収入減や借入金利の上昇等に対応できなくなる可能性が高くなります。返済期間を長く設定して月々の負担を減らしておけば、収入の変動にも対応しやすくなります。
ただし、無闇に返済期間を長く設定することが、後の資金難につながる可能性もあります。仮に45歳の人が30年の住宅ローンを組んだ場合、繰上返済をしないと完済するのは75歳です。65歳が定年の場合、その後の10年間の返済額をどのように確保するのか、あらかじめ考えておく必要があるでしょう。
住宅ローンを組む際に知っておきたい返済負担率
「住宅ローンをいくら借りて、何年で返すのか」を決める際に知っておきたいのが、返済負担率です。返済負担率は、住宅ローンをいくらまで借りられるのかを知る目安であり、借入後に無理なく返せるかどうかを考える際の指針にもなります。
返済負担率とは?
返済負担率は、額面年収に対する返済金額の割合を示すものです。例えば、年収500万円の人が毎月10万円の住宅ローン返済を行っている場合、年間収入のうち、120万円を借入金の返済に使っていることになります。この場合の返済負担率は、下記のとおりです。
120万円500万円100=24%
また、この人に年収500万円の配偶者がいた場合、世帯単位で考えた返済負担率は下記のようになります。
120万円(500万円+500万円)100=12%
返済負担率と借入可能額の関係
返済負担率は、金融機関が「いくらまで住宅ローンを貸せるか」を審査する際のポイントのひとつでもあります。返済負担率が高いということは、それだけ年収に対して返済額が高いということですから、その分、将来返済が滞るリスクも高くなります。返済負担率が高すぎるとみなされた場合、住宅ローンの審査が通らない可能性があるのです。
それでは、具体的に返済負担率が何%までなら住宅ローンが通るのかというと、これは、それぞれの金融機関によって異なります。多くの金融機関では基準を公開していませんが、住宅金融支援機構のフラット35では、下記のように基準が明示されています。
<フラット35の利用条件>
・年収400万円未満:返済負担率30%以内
・年収400万円以上:返済負担率35%以内
つまり、年収400万円の人であれば、400万円35%=140万円(年間の返済額)までであれば、借入れが可能ということになります。月額にすると、約11万6,000円です。
ただしこれは、住宅ローンに加え、教育ローンやカーローンのほか、クレジットカードのキャッシングや分割払い、リボ払いなど、すべてのローンを含んだ金額です。この人がカーローンで毎月3万円の返済をしている場合は、3万円12ヵ月=36万円が差し引かれ、年間104万円、月額約8万6,000円までの返済に収まる金額までしか借りることができなくなります。
希望借入額に届かない場合は、繰上返済をして現在の借入れをなくしたり、希望借入額を引き下げたりする必要があるでしょう。
返済負担率と返済可能額の関係
フラット35で住宅ローンを組む際に借入れが可能なのは、返済負担率が30~35%に収まる金額です。返済負担率の基準を公開していない金融機関であっても、おおよそ同程度だと考えていいでしょう。しかし、これはあくまでも借りられる上限で、問題なく返せる金額とは違います。
仮に、現在の月々の額面収入が40万円、手取り金額が32万円、ボーナス支給がない人がいたとしましょう。この人の年収は40万円12ヵ月=480万円です。返済負担率30%の場合、年間144万円、月に12万円までの返済額であれば借入れができることになります。しかし、現在のこの人の生活費が、家賃以外に20万円かかっていた場合、月の支払いが12万円の住宅ローンを組むと、一切貯金ができなくなってしまうでしょう。マンションを購入した場合、管理費や修繕積立金を支払うこともできません。
実際に無理なく返済できる返済負担率がどのくらいなのかは、それぞれの人の年収や生活費、将来の資金計画などによって変わります。目安としては手取り収入の20%程度といわれています。
上記の例でいくと、月額8万円です。手取り収入が32万円で住宅費が8万円であれば、それなりに余裕のある生活を送り、将来のための貯金をすることもできるのではないでしょうか。
住宅ローンは無理なく返済できる金額・期間が原則
住宅ローンを借りるときは、無理のない支払額や返済期間がどのくらいなのかを考えることが大切です。銀行では、年収と借入額をもとにした資金シミュレーションなども行ってくれるため、積極的に相談してみましょう。近い未来だけでなく、完済時まで無理なく返済していける借入額を検討することが大切です。
吉田 祐基
ライター・編集者。AFP/2級FP技能士。マネー系コンテンツの制作が得意。これまで東洋経済オンライン(東洋経済新報社)、日本経済新聞(日本経済新聞社)、Finasee(想研)などで企画・編集・執筆を担当。
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