その時に困らない、今のうちにできること「相続」(後編)
今回のテーマは、「上手なお金の遺し方・渡し方」です。親や身近な人が亡くなった後で起こるトラブルや面倒な手続きを避けるために、今からできることを考えます。
前回は、「相続」について触れました。今回は、その続き、「相続税」から解説していきます。
2015年に相続税の基礎控除額が減額されたため、相続税の申告が必要となる人が増加しました。今まで、自分は関係ないと思っていた人も、確認したら対象になっていた、と慌てるケースも増えています。ちょっと数字がいっぱい出てきて、ニガテ、、という方もいらっしゃるでしょうが、頑張って目を通してみてください。
相続税には基礎控除がある
「どう分けるか」とともに気になるのが「相続税」です。相続が発生したら、必ず相続税の支払いが生じるわけではありません。相続税には「基礎控除」があり、相続財産が基礎控除額よりも多い場合に納税が必要となり、基礎控除を超えた分に対して課税されます。
基礎控除の金額は「3,000万円+600万円法定相続人の人数」。先述の4人家族の場合、母・長男・次男と法定相続人が3人なので、基礎控除は「3,000万円+600万円3=4,800万円」となります。遺産が4,800万円までなら相続税はかかりません。
また、基礎控除以外にも税負担の軽減措置があります。
たとえば、配偶者が遺産を相続する場合には1億6,000万円以下、もしくは法定相続分以下(子どもがいる場合、2分の1以下)であれば、相続税はかかりません。これは、配偶者は財産をともに築いたり、維持してきた存在であること、配偶者を亡くしたあとの生活に配慮した特例です。
注意したいことは、相続が発生してから(被相続人が亡くなってから)10ヵ月以内に税務署に申告、納税する必要があるということ。1日でも遅れると延滞税がかかってしまいます。
※上記は一般的な事例をもとにした試算です。当行では具体的な税額の計算、および、税務申告書類作成にかかる相談業務はおこなっておりません。個別の取り扱いについては、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご確認ください。
上手な遺産の渡し方
基礎控除額を超える可能性がある人は、たとえば、生命保険を使って現金を残すのもひとつの方法です。
亡くなった人が保険料を払っていた保険は「みなし相続財産」として相続税の対象ですが、「500万円法定相続人の人数」までは非課税。法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、500万円3=1,500万円まで課税されません。生命保険に加入しておくことで有利に相続することも可能になります。
そのほか、「生前贈与」という方法もあります。生きている間に子や孫に資産を贈与して、相続財産を減らし相続税を抑えるというものです。
資産を贈与すれば贈与税がかかりますが、1人に対して年間110万円までの贈与は非課税です。贈与する相手は家族以外でもいいですし、金融資産でなくてもかまいません。
ただ「子どもに内緒で少しずつ贈与しておきたい」と考えて、子どもの名義の口座に入金してそのまま通帳を管理していると、実質的に親の財産だとみなされて相続税がかかる可能性があります。「贈与契約書」を交わす、親の口座から子どもの口座に送金する、場合によっては110万円を少し超える額を贈与して贈与税を納めるなどの方法をとると安心です。
親が元気なうちに確認しておこう
さて、ここまで相続する側の立場でお話ししてきましたが、相続を受けとる場合のことも考えておきましょう。
親から相続する可能性がある場合は、親の資産についてある程度把握しておきたいところです。というのも、親が突然病気になったり、認知症が進んだりすると、どの銀行にお金を預けてあるのか、保険には加入しているのか・・・など分からなくなってしまいます。死亡保険などはこちらから申請しないと受け取ることができません。
相続を円滑にすすめるためには、資産をある程度整理しておくと良いでしょう。
現金、預貯金、株式などの金融資産は、銀行名・口座番号など一覧表にまとめます。使っていない口座などがあれば解約しても良いですね。というのも、口座の名義人が亡くなると口座は凍結され、遺族であっても預金を引き出すには、少々煩雑な手続きが必要だからです(所定の書類に法定相続人全員がサインをして、印鑑証明などを添えて金融機関に提出)。
そのほか、自宅などの不動産、自動車、生命保険金などが相続の対象となります。
話すきっかけが難しい
突然、家族で遺産や相続のことについて話すのは抵抗を感じると思います。ただ、何度も繰り返しになりますが、なかなかこういった話はする機会がないものの、ものすごく大切なことです。しかも、いざとなった時には「話したいときに、相手はいない」のです。何か伝えやすい方法を考えて、親が元気なうちに確認しておくことをお勧めします。また、この記事が、「こんなのを見かけたんだけどね、、」と、話しのきっかけになれば、幸いです。
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