外貨預金で円安に備える!メリットや注意点を解説

日本は少子高齢化で労働人口が減っており、それに伴う経済の弱体化や、財政の悪化が懸念されています。危機感を持った海外の投資家などが保有する日本円を売れば、円安になって輸入食品や原油などが値上がりするでしょう。そうなると、私たちの生活へ与える影響は大きく、持っている資産が日本円だけだと、相対的に目減りすることにもなります。

こういったリスクに備える方法のひとつが、資産の一部の外貨での保有です。日本円の価値が下がっても外貨の価値が上がれば資産全体の目減りを抑えられ、それを売却すれば為替差益が得られます。外貨投資は、お金を増やすためにも、資産を守るためにも役立つものとなりえるのです。
今回は、外貨で資産を守り増やす外貨預金について、円預金との違いやメリット、注意点などを紹介します。

外貨預金と円預金の違い

外貨で資産を保有する方法はいくつかありますが、その中のひとつに外貨預金があります。預金をすれば、あらかじめ決まった金利の利息がつくのは、円預金でも外貨預金でも同じですが、両者には決定的な違いがあります。
一般的な円普通預金や円定期預金には元本保証があり、解約時または満期時に受け取れる元金が預入金額を下回ることはなく、利息も事前に決められた額が確実に受け取れるものです。しかし、長らく超低金利が適用されている円預金では、金利による利益はあまり見込めないでしょう。

外貨預金は日本円を外貨に換える必要がありますが、自分で両替するわけではなく、申込をすれば日本円がそのときの為替レート (買付レート)で自動的に外貨に交換されて預けられる仕組みです。一般的に外貨のほうが金利は高い傾向があり、さらに為替レートによって価値が変動するため、解約時に預入時より円安になっていれば、為替差益による利益も得られます。
ただし、外貨預金は元本保証がなく、為替レートの変動によって元金と利息の額が増減する場合があることに注意が必要です。また、預入時と満期時の為替レートが同じであったとしても、日本円を外貨に換えるときと外貨を日本円に戻すときにそれぞれ為替手数料がかかり、元本割れとなる場合があります。

外貨普通預金と外貨定期預金の違い

外貨預金には円預金と同じように、「普通預金」と「定期預金」があります。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

外貨普通預金

外貨普通預金は、いつでも預け入れ、引き出すことができます。預入期間の定めはありませんので、預け入れたしたときより円安になったときに引き出して、為替差益を得るという使い方ができます。ある程度頻繁に預け入れたり引き出したりしたい人には、外貨普通預金が向いているでしょう。

ただし、外貨預金は預け入れる(円を外貨に換える)ときと引き出す(外貨を円に戻す)ときに、為替手数料がかかります。金融機関を選ぶときは、為替手数料について確認することが大切です。

外貨定期預金

時間をかけてじっくり資産を増やしたい人、あるいは目先の為替変動よりも、インフレ対策や将来の円安に備えて外貨を保有するのが目的という人には、外貨定期預金がおすすめです。
外貨定期預金は預入期間が決まっていて、解約できるのは原則として満期のときのみ。満期に解約せずに、自動的に同じ期間の定期預金に継続することもできます。

外貨定期預金は、一般的に預入期間が長くなるほど金利が高くなる傾向があります。満期まで預入時の金利が適用されますが、預入時の適用金利はそのときの金利水準によって変化します。そのため、将来的にこれから金利が上昇しそうなときは期間を短く、金利が下がっていきそうなときは期間を長くするのがいいでしょう。

同じ通貨なら、外貨普通預金より外貨定期預金のほうが金利は高く、定期預金は満期までの期間が長いほど金利が高いのが一般的です。ただし、昨今は先進国の通貨の金利は、過去の水準に比べるといずれも低い状況で、外貨普通預金と外貨定期預金の金利の差があまりないケースもあります。先進国の通貨で外貨定期預金をするなら、将来の金利上昇を考えて期間を短いものを自動継続していくといいかもしれません。
新興国の通貨の金利は高めですが、その分大きく変動するリスクもはらんでいます。国の政治や経済の情勢を分析して、預入や引出しのタイミングを見極める必要があるため、初心者は避けておいたほうが無難です。

外貨預金の注意点

円で資産を保有するよりも価値が上がる可能性があり、為替差益が得られる可能性もある外貨預金ですが、注意点もあります。ここでは、外貨預金を始める前に知っておきたいことを紹介します。

預金でもマイナスになることがある

外貨預金で気をつけたいのは、預金でも元本割れの可能性があることです。
円の預金は元本が保証されていて、解約時の金額が預入時より少なくなることはありません。外貨預金も、外貨ベースでは円の預金と同じです。ただし、預け入れたときと解約したときの為替レートによっては、預入時の円の金額より少なくなることがあります。反対に、為替レートによって利息のほかに為替差益が得られることもありますが、注意が必要です。

また、為替レートの変動のほかに、通貨を交換するときにかかる為替手数料の負担によって、元本割れとなる場合があります。このように、外貨預金は同じ預金でも、円の預金とは性質が異なることを頭に入れておく必要があるでしょう。

円安・円高の概念を押さえておく

さまざまな通貨が世界中で常時取引されており、交換の比率(為替レート)は刻々と変わっています。例えば、ある時点の外国為替相場でドルと円の交換比率が「1ドル=120円」だったら、1ドルを買うのに120円必要ということです。
為替レートが変動し、「1ドル=125円」になったら、1ドルを買うのに125円が必要になります。つまり、米ドルの価値が5円分上がった、言い換えれば円の価値が5円分下がったということになり、この状態が「円安(ドル高)」です。反対に「1ドル=115円」になったら、120円のときより少ない円で1ドルが手に入るわけですから、ドルの価値が下がって日本円の価値が上がったといえます。これが「円高(ドル安)」です。
外貨預金をする上で、預入時や解約時の為替レートは資産の増減に大きく関わりますから、円安・円高の概念はしっかり覚えておきましょう。

預入期間に注意する

世界で相次いで金融緩和が実施されたこともあり、外貨預金の金利水準は、以前に比べて下がりました。そのような中でも、目を引くような高い金利の外貨定期預金を見かけることがあります。覚えておいてほしいのが、多くの外貨定期預金は、預入期間が1年に満たなくても「年利」で表されていることです。

例えば、金利が年5%(税引前)、預入期間が3ヵ月の米ドル定期預金があったとします。これに1万米ドルを預けると、受け取れる利息額(税引前)は「1万米ドル×5%=500米ドル」ではありません。
この例の米ドル定期預金は預入期間が3ヵ月なので、利息額は1年間預けた場合の12分の3となり、「1万米ドル5%×3/12=125米ドル(税引前)」です(利息額は、実際には1年を365日とした日割り計算となり源泉分離課税として課税されます)。一見高い金利でも、適用期間が短いと実際に受け取れる利息は少なくなります。金利だけではなく、適用される期間もチェックしてください。
一定期間ですが適用金利は高いため、預入期間で得られる利息額を計算して十分と判断した場合は、もちろんこういった商品も有効です。

外貨の交換に為替手数料がかかる

外貨預金を行う上で、押さえておきたいポイントが「為替手数料」です。2つの通貨を交換するとき、金融機関へ支払う手数料として為替手数料がかかります。為替手数料は「手数料」という形で表示されず、為替レートの中に含まれていることが多いため、気付かない場合もあるかもしれません。

金融機関で日本円を外貨に換えるときの為替レートはTTS(対顧客電信売相場)、外貨を日本円に換えるときの為替レートはTTB(対顧客電信買相場)といい、仲値という基準のレートに手数料を足し引きして決められています。例えば、1米ドルの仲値が100円のとき、為替手数料が1円なら、日本円から米ドルにする為替レート(TTS)は「1米ドル=101円」、米ドルから日本円にする為替レート(TTB)は「1米ドル=99円」ということです。

1米ドルあたり為替手数料が1円なら、日本円を外貨にしてその外貨を円に戻したら都合2円です。たいしたことはないと感じた人もいるかもしれませんが、手数料が1円かかったら、(金利を考えないとすると)外貨を日本円に交換するときの為替レートが、預入時より2円以上円安になっていないと、利益が得られないということになるでしょう。
為替手数料は金融機関によって違いますから、できるだけ低い金融機関を探すとともに、安易な交換を繰り返さないことも重要です。

外貨預金で通貨を選ぶときに考えるべきこと

外貨預金ができる通貨は金融機関ごとに異なり、外貨普通預金か外貨定期預金かによっても異なります。選択肢が多いので、どの通貨で預金したらいいのか迷う人もいるかもしれません。
外貨預金は、「金利」「為替手数料」「為替レートの変動」の3つがポイントです。通貨を選ぶ際にも、この3つを基本に考えてください。

通貨による金利の違い

金利は取り扱う金融機関によって異なり、先進国は市場金利が低く、南アフリカやトルコなどのいわゆる新興国は、市場金利が高い国が多い傾向です。外貨預金の金利も各国の金利情勢と同様に動く傾向があり、一般的に先進国通貨の外貨預金金利は低く、新興国通貨の預金金利は高めになっています 。新興国は、市場金利が高い代わりに、カントリーリスクが高い通貨のため、お預け入れの際にはご注意ください。

通貨による為替手数料の違い

金利とは反対に、為替手数料は先進国通貨のほうが安く、新興国通貨は高い傾向があります。金融機関によって理由はさまざまですが、市場での取引・流通量や価格変動の大きさなどが影響しているようです。取引量の多い先進国通貨は売買がしやすいので、為替手数料は低くなる傾向があります。

為替レートの変動は通貨取引・流通量も参考に

為替レートを考える際は、価格変動の大きさを頭に入れておくことがポイントです。変動が大きいと為替差益が得られる可能性が高い反面、為替差損が生じる可能性も高くなります。外貨預金で長期的に資産づくりをするのであれば、変動が少ない通貨を選んだほうがいいかもしれません。

為替レートの変動は当事国のみならず、世界各国の政治や経済の情勢の影響も受けるほか、各通貨の取引・流通量も要因となります。一般的に、取引や流通の量が少ない通貨は為替の変動が大きくなりがちです。

<先進国・新興国の通貨の傾向>
・先進国の通貨:為替手数料は安い、金利は低い、取引・流通量が多く価格変動は小さい
・新興国の通貨:為替手数料は高い、金利は高い、取引・流通量が少なく価格変動は大きい

外貨預金するならどの通貨がおすすめ?

実際に外貨預金をするとなれば、通貨を決めなければなりません。では、初心者はどの通貨がおすすめなのでしょうか。

米ドルの金利は比較的高く、世界で最も多く取引されていて、国際的な通貨取引の基準となる「基軸通貨」です。市場での流通量が多いことも勘案し、これから外貨預金を始める初心者には適しているかもしれません。為替レートに影響を及ぼすニュースが手に入りやすいことも、米ドルのメリットです。
オーストラリアドルは、取引・流通量がある程度多く、先進国通貨の中では比較的金利が高いことから人気があります。

なお、新興国通貨は金利が高くても為替レートの変動が大きいので、初心者は避けたほうが無難かもしれません。もし、将来性に期待、あるいは金利面に魅力を感じて新興国通貨を選ぶ場合は、長期投資を前提にするのがおすすめ。また、預入金額を少なめにしたり、購入タイミングを分散したりするなどの工夫が必要となるでしょう。

為替レートが変動する要因

為替レートの変動で為替差益や為替差損が生じるため、外貨預金を行う上で為替レートは切っても切れません。
為替レートとは、外国為替市場で取引された通貨の売買価格を示したもの。通貨の売買価格の決定要因はさまざまですが、最もわかりやすいものが、「需要と供給のバランス」でしょう。通貨に限りませんが、買いたい人が多ければ価格は上がり、売りたい人が多ければ価格は下がります。
例えば、円を売って米ドルを買う取引が増えれば「円安・米ドル高」になりやすく、米ドルを売って円を買う取引が増えれば「円高・米ドル安」になる傾向があるといった具合です。

そのほかにも、為替レートの変動理由には、下記のようなものがあります。

■為替レートが変動する主な要因
貿易収支 貿易収支が黒字になると通貨高、赤字になると下落の傾向がある
投資収支 株や債券が買われる国の通貨は上がりやすく、売られる国の通貨は下がる要因となる
経済指標 GDP、CPI、失業率、小売売上高、住宅着個数などの指標によって為替レートが動く(特に発表時)
景気動向 好景気の国の通貨は高くなる傾向がある
金利動向 金利が高くなった国の通貨は上昇、金利が低くなった国の通貨は下落する傾向がある
物価動向 インフレが起きている国は通貨が下がる傾向がある
金融政策 中央銀行が通貨の売買を行う為替介入をすると、為替レートが変動する
地域紛争や自然災害 紛争や災害が経済などの有事の際、為替レートが変動する

ただし、これらの要因は「必ずそうなる」というものではなく、「円高や円安の要因となりうる」ものと考えるようにしてください。

予測は困難!長期スタンスで外貨預金しよう

為替レートは、実に多くのさまざまな要因が複雑に絡み合って動くため、「◯◯だから上がる(下がる)」というセオリーどおりに行かないことがあります。そのため、個人が外貨預金をする際は、短期的な為替レートに左右されず、長期的なスタンスで臨むことがおすすめです。

日本より金利の高い国の通貨で預金することで、利息や為替差益で収益を得られる可能性があります。また、資産を日本円だけに限定しないことで、円安のリスクを軽減することにもなるでしょう。為替レートの変動要因の動向を追ったり、通貨の売買のタイミングを計ったりすることは簡単ではありませんが、なんとなく気にかけておくだけでも、少しずつ知識は深まります。少しずつ身に付けた知識は、ほかの資産運用手法にも役立つはず。まずは少額から外貨預金を体験してみませんか?

 

執筆者プロフィール

  • 本稿は、執筆者が本人の責任において制作し内容・感想等を記載したものであり、SBI新生銀行が特定の金融商品の売買や記事の中で掲載されている物品、店舗等を勧誘・推奨するものではありません。
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