インフレ・デフレはこんなに違う
インフレになると景気が良くなる?
これまで安くなることが多かったモノの値段が、最近風向きが変わって「値上げ」という言葉をよく耳にするようになったと感じていませんか?モノの値段が安くなる状態をデフレーション、「デフレ」と略して呼ぶこともあります。デフレが続くと私たち消費者は、もう少し待てば欲しいモノがもっと安くなるのではないかと考えて、モノを買うことを先延ばしにします。そうなるとモノが売れにくくなり、企業は売上や利益の減少に見舞われ、それにより設備投資を減らしたり、従業員への給与を減らすなどの投資や出費を控えたりすることが予想されます。そのため、デフレは景気が悪くなる大きな要因のひとつと言われています。日本ではおよそ15年間もデフレ傾向が続き、また日本経済は総じて低成長を続けました。
そこで日本銀行は2013年4月から、この景気低迷の要因になっているデフレからの脱却を目指し、デフレとは逆のモノの値段が高くなるインフレーション=「インフレ」転換を目指す金融政策を実施しています。物価上昇の目標は2%を掲げています。
もし今後、モノの値段が徐々に上がっていくようになれば、消費者は必要なモノなら買うことを先延ばししないようになることが見込まれます。そうなれば、企業は売上が増え、利益が改善することで、投資や支出を増やすようになるでしょう。企業の業績も良くなって従業員の給料も上がれば、景気は回復に向かうことが期待できるというわけです。
インフレになるとお金の価値が下がる?
デフレをおカネとの関係で捉えると、デフレ時代はおカネの価値が上がり続ける現象とも言えるでしょう。1個100円のモノが90円、80円……50円まで値下がりすると、100円で2個買えるようになるのですから、100円の価値は2倍になっていますね。デフレの時代はモノの価値が下がり、相対的におカネの価値が高くなるということになります。
逆にインフレになると1個100円のモノが110円、120円と値上がりを続けて200円になったら?1個買うのに200円用意しなければ買えなくなるので、インフレの時代は、相対的にモノの価値が上がり、おカネの価値が下がる、ということになります。
インフレが進むなかでは、現金や預金のままでは損をするかも?
モノの値段が上がり、おカネの価値が下がるということは、おカネを現金資産(預貯金)のままで保有していると、価値が目減りしかねません。
銀行の預金金利がインフレ率と同じような水準であれば、預貯金の利息で現金資産の目減りは緩和されますが、もし、今後日銀の金融政策の効果などで物価の上昇(インフレ)が進み、預金金利が今の低金利のままであれば、現金資産が目減りしないような対策も必要になるかもしれません。つまりインフレが進むと考えた場合には、現金資産の価値を減らさないためにも、すべてのおカネを預貯金で保有し続けるより、一部でも、インフレに対応できるような資産に資金を移すことを検討する必要があるのではないでしょうか。
インフレは為替相場にも影響を与え、円安要因のひとつ
インフレ、デフレは為替相場にも影響を与えるといわれています。為替相場とは2つの国の通貨の交換比率のことで、たとえばニュースで1米ドル=120円と言った時はアメリカドルと日本円の交換比率を表しています。
一般的にインフレになると、おカネの価値が下がるので、インフレの国の通貨にとっては通貨安要因になり、外国の通貨との交換比率も安くなります(デフレの場合はその逆で通貨高要因となります)。
実際の推移でも、これまでアメリカはインフレ傾向にあり、日本はデフレ傾向でしたので、為替相場では通貨(円)の価値が上がる円高傾向が続いていました。しかし、ようやく日本のデフレが収まりインフレの兆候が見えてきたので、円の価値が下がりはじめ、円安傾向が強まってきているといえるでしょう。
ここで気を付けたいのが、日本でインフレ→円安傾向がさらに強まるようだと、インフレによるモノの値段上昇に、円安による輸入物価の上昇も加わるということです。つまり、一部の食料品やガソリンなど輸入に頼る商品の値段がますます高くなる可能性があるのです。インフレが進んでも、給料所得もその分増えたり、預貯金の金利が高くなってくれればいいのですが、インフレに備えた資産対策もしっかり考えておく必要もありそうです。
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