サラリーマンの節税方法8選――税金を減らして手取り収入を増やそう
サラリーマンが毎月受け取る手取り給与額は、額面給与から各種社会保険料や税金が引かれたあとの金額です。「入社時に提示された給料よりも額が少ない」と嘆いたことがある人もいるのではないでしょうか。
しかし、引かれる税金を減らせる方法もあります。所得税や住民税を減らせば、給与額が同じでも手取りを増やせます。そこで、手取り額をできるだけ多くするために、サラリーマンが活用できる節税方法をご紹介。利用できるものがないか、チェックしてみてください。
目次
サラリーマンでも節税は可能?
自分で確定申告して、年間の所得額や税額を申告する自営業者とは異なり、サラリーマンの多くは会社で年末調整を受けることによって、所得額や税額の申告を行います。自分自身で手続きするわけではないため、税金の計算方法や金額に無頓着になったり、節税に意識が向かなかったりすることもあるかもしれません。
しかし、サラリーマンも年末調整や確定申告で節税をすることが可能です。本来、支払う必要のない税金を引かれることがないよう、節税に関する知識を身に付けましょう。
節税を考える上で知っておきたい「2つの控除」
所得税や住民税は、課税所得額に税率を掛けることで求められます(住民税の実際の計算方法はもう少し複雑ですが、ここでは割愛します)。
このうち、「課税所得額」を減らす控除を「所得控除」と呼び、「税額」そのものを減らす控除を「税額控除」と呼びます。例えば、年収400万円の人の所得控除が150万円で、税額控除が10万円の場合、下記のような計算でおおよその税額を算出することができます。
税額=(400万円-150万円)×税率-10万円
税額控除は、税金の額を直接差し引くことができるので、所得控除よりも節税効果が高くなります。
サラリーマンもできる8つの節税対策
サラリーマンも対象となる控除を利用すれば、節税をすることができます。そこで、サラリーマンの節税におすすめする、8つの控除をご紹介します。
1 扶養控除・配偶者(配偶者特別)控除
・申告方法:年末調整(申告を忘れた場合、確定申告でも申告可能)
・控除の種類:所得控除
扶養控除は合計所得が48万円以下など一定の条件を満たす扶養家族がいるとき、配偶者控除は配偶者の合計所得が48万円以下などの条件を満たす場合に適用される控除です。なお、ほかにも配偶者特別控除といって、配偶者に48万円超133万円以下の収入があり配偶者控除の対象にならない、納税者の合計所得が1,000万円以下など、一定の条件を満たせば利用できる控除もあります。
扶養控除・配偶者(配偶者特別)控除の適用にはさまざまな条件がありますが、第一は収入です。条件の金額を超えれば控除を受けられませんから、所得額には注意してください。
扶養控除の申告は、年末調整の際に会社から渡される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で、配偶者(配偶者特別)控除は「給与所得者の配偶者控除等申告書」で行います。申告書に記入し、必要書類を添えて提出すれば適用されます。
2 生命保険料控除・地震保険料控除
・申告方法:年末調整(申告を忘れた場合確定申告でも申告可能)
・控除の種類:所得控除
生命保険料控除は、生命保険や医療保険、個人年金などに加入している場合に適用される控除です。
地震保険料控除は同様に、地震保険に加入している場合に適用されます。該当する保険に加入している場合は、忘れず年末調整で申告しましょう。なお、火災保険は保険料控除の対象外です。
生命保険料控除も地震保険料控除も、申告方法はほとんど同じです。
毎年10~11月頃に、加入している保険会社から保険料控除証明書が届きますから、年末調整の際に会社から渡される「給与所得者の保険料控除申告書」に内容を転記し、申告書の案内に沿って控除額を計算してください。
証明書を添えて会社に提出すれば、申告完了です。会社のシステムによっては、払い込んだ保険料を入力するだけで、控除額が自動で計算される場合もあります。
3 iDeCo
・申告方法:年末調整(申告を忘れた場合確定申告でも申告可能)
・控除の種類:所得控除
iDeCoに加入している人は、「小規模企業共済等掛金控除」を利用することができます。
年末調整の時期が近くなると、国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金控除証明書」が届きます。「給与所得者の保険料控除申告書」の中の「小規模企業共済等掛金控除」のうち、「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」欄に内容を転記して申告しましょう。
なお、iDeCoは保険料控除とは違い、計算の必要はありません。拠出金の全額が控除対象となります。
4 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
・方法:初年度は確定申告、2年目以降は年末調整(申告を忘れた場合確定申告でも申告可能)
・控除の種類:税額控除
住宅ローン控除は、住宅ローンを組んで住宅を購入した人のうち、一定の条件を満たす場合に利用できる控除です。対象になるかどうか、住宅ローンを組んだ人は条件を必ず確認しましょう。
住宅ローンを組んだ最初の年は確定申告を行います。税務署や国税庁のWebサイト確定申告書作成コーナーなどで手続きをしましょう。2年目以降は年末調整で申告可能です。
まず、税務署から届く「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」に、住宅ローンを借りている金融機関から届く「年末残高証明書」の内容を転記。その後、案内に沿って計算を行い、借入れをした金融機関から送られてくる年末残高証明書を添えて申告します。
2年目以降に使う住宅ローン控除の書類は、会社から渡されるのではなく、税務署からまとめて届く毎年の申告書を使います。失くさないように大切に保管しておいてください。
5 ふるさと納税
・申告方法:確定申告(ワンストップ特例制度を利用した場合は申告不要)
・控除の種類:所得控除・税額控除
ふるさと納税は、自治体に寄付を行うと、その金額に応じて控除が受けられる制度です。ふるさと納税を利用した場合、確定申告を行うことで、その年の所得税から還付、翌年の住民税から控除という形で節税が可能です。基本的には、1年間の寄付金から2,000円を引いた金額が控除対象になります。
多くの自治体は、ふるさと納税の返礼として特産品を送っているため、ふるさと納税は実質2,000円で特産品がもらえ、節税もできる制度として注目されています。
また、ふるさと納税した地域が5ヵ所以内で、それ以外に確定申告をする必要がないサラリーマンであれば、「ワンストップ特例制度」を利用することで、確定申告せずに控除を受けることも可能。「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入し、寄付した自治体に送るだけで、確定申告をせずとも控除を受けられます。
6 医療費控除・セルフメディケーション税制
・申告方法:確定申告
・控除の種類:所得控除
医療費控除は年間の医療費が10万円を超える場合、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、薬局で指定の医薬品を購入した額が年間1万2,000円を超えた場合に利用できます。どちらの場合も、家族全員の分を合算可能で、確定申告をして申告。領収書は必ず保存しておきましょう。
ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制は同時に利用することができません。利用する場合は適用を受けられる条件を確認し、どちらの控除が大きいか検討してください。
7 特定支出控除
・申告方法:確定申告
・控除の種類:所得控除
特定支出控除とは、サラリーマンの資格取得費、通勤費など、定められた7つの項目のうち、支出の合計額が、給与所得控除の額の2分の1以上の場合に利用できます。支出の明細書と領収書、勤務先からの証明書を添えて確定申告を行います。
サラリーマンの経費を控除できる魅力的な制度ですが、「特定支出に関する明細書」に必要事項を記入し、会社に提出した上で証明を受ける必要があるため、これまで紹介した方法と比べると少しハードルは高くなるかもしれません。特定支出に関する明細書は国税庁のWebサイトで取得できます。
8 損益通算・繰越控除
・申告方法:確定申告
・控除の種類:所得控除
資産運用で損失が出た場合、損益通算や繰越控除が利用できます。損益通算とは、複数の証券口座を保有している場合に、それぞれの口座の利益と損失を通算できる(損失分を利益から差し引ける)制度です。
一方の繰越控除は、ある年の損失を最大3年間繰り越して控除できる制度です。
利用するためには、どちらも確定申告が必要です。なお、iDeCoやNISAでの投資はそもそも利益に課税されないため、これらの控除は利用できません。
個人事業主になると節税できる?
サラリーマンであっても、さまざまな控除を利用すれば節税することができるでしょう。しかし、副業をしている場合で、さらに積極的に節税をしたいのであれば、個人事業主になる方法があります。
サラリーマンでも、開業届を出せば個人事業主になることが可能です。すると、自宅で仕事をしている場合の家賃や光熱費、スマートフォン代、パソコン代など、仕事に使う費用を経費として申告できるようになります。経費は収入額から引くことができますから、結果的に、課税所得額を減らすことができるのです。
さらに、青色申告をすれば、青色申告特別控除という所得控除を利用することもできます。副業をしている場合は、節税の面から個人事業主になることを検討してみるのもいいでしょう。
サラリーマンでも節税できる!申告漏れに気を付けよう
サラリーマンでも、扶養家族がいる人や、保険やiDeCoに加入している人などは節税をすることができます。収入を増やすことは簡単ではありませんが、節税によって手取り額を増やすことは可能です。
節税につながる控除の中には、申告しないと適用されないものもたくさんあります。自分がどのような控除を利用できるのかを知って、申告し忘れや申告漏れがないように気を付けましょう。
【監修者】
吉田 祐基
ライター・編集者。AFP/2級FP技能士。マネー系コンテンツの制作が得意。これまで東洋経済オンライン(東洋経済新報社)、日本経済新聞(日本経済新聞社)、Finasee(想研)などで企画・編集・執筆を担当。
執筆者プロフィール