髪の悩みは洗髪から見直そう!美容師が教える「髪の洗い方」

「髪がベタつく」「頭皮がかゆい」といったトラブルを感じたとき、髪をちゃんと洗えているのかどうか不安に思うことがあるかもしれません。頭皮の状態は自分の目で確認しにくいため、しっかり洗えているのか実感するのは難しいものです。
しかし、わからないからこそ、髪のトラブルを避けるために自分に合ったシャンプーを使って正しく髪を洗うことが大切です。ここでは、スタイリスト歴20年以上のベテランで、美容室「Blossom」のサロンディレクターでもある佐藤佑哉さんに、髪の洗い方を教えていただきました。

髪を洗うことは、頭皮を洗うこと

──まず、髪がきちんと洗えていないと、どのような状態になってしまうのか教えてください。

佐藤さん(以下、敬称略):

髪を不衛生な状態にしていると、頭皮の毛穴に皮脂や汚れが蓄積して詰まり、さまざまなトラブルを招きます。雑菌が繁殖し、炎症を起こしたり、湿疹ができたりすることもあるかもしれません。あるいは、そこまでひどくならなくても、嫌なにおいや脱け毛の原因になる可能性もあります。
また、毛穴が詰まった状態では、健康な髪の毛が生えにくくなります。トラブルを防ぎ、美しい髪を育むためにも、髪をきちんと洗うことはとても大切です。

ただし洗髪は、髪ではなくて頭皮を洗うことを強く意識していただきたいですね。毎日洗っているのになんとなくすっきりしないという人は、もしかすると頭皮までしっかり洗えていないのかもしれません。

──髪を洗うタイミングはいつがいいのでしょうか?

佐藤:

汚れや皮脂を蓄積させないためにも、基本的に髪は毎日洗うことをおすすめします。1日1回が基本ですが、夏場など汗をかいて気持ち悪いと感じたら、その都度軽く洗うのもいいでしょう。夜は疲れているので、朝起きてから洗うという人もいるかもしれませんが、できればその日の汚れはその日のうちに落としてあげたいものです。特に、スタイリング剤などを使用している場合は、洗い落とさずに眠るのはおすすめできません。枕との摩擦で髪が傷んだり、毛穴が詰まったりする原因になってしまいます。

適切なタイミングで洗っていても髪の傷みや乾燥が気になるとしたら、洗う回数や頻度に問題があるのではなく、シャンプーの選び方や髪の洗い方に原因がある可能性があります。

シャンプー選びは、髪や頭皮の悩みを基準にする

──シャンプーを選ぶときの基準はありますか?

佐藤:

香りやテクスチャーなどの好みもあると思いますが、シャンプーを選ぶ際には自分が今、髪や頭皮に関して気になっていることに重点を置き、その悩みやトラブルに寄り添って選択することが第一です。髪や頭皮に関する悩みと一口にいっても、頭皮の乾燥や毛先の傷み、ベタつき、髪のきしみだけでなく、髪が広がってしまう、ペタンとしてしまう…など、さまざまあると思います。何が気になるのかを考えた上で、その悩みを解消してくれる効果が期待できるシャンプーを選ぶといいかもしれません。

──とはいえ、市販のシャンプーはさまざまな種類があるので、どれが自分に合うのかわからない人も多いと思います。

佐藤:

シャンプーの種類は、洗浄成分である界面活性剤のタイプによっていくつかに分けられます。「石油系(高級アルコール系)」「石鹸系」「アミノ酸系」「両性系(ベタイン系)」の4種類が代表的です。

石油系のシャンプーは洗浄力・脱脂力ともに強く、比較的低価格で買える物が多いのが特徴です。皮脂も強力に落とすので洗い上がりはさっぱりしますが、洗浄力が強いため頭皮を乾燥させすぎてしまうというデメリットもあります。パーマやカラーをしている人、髪の傷みが気になる人は控えたほうがいいかもしれません。

石鹸系のシャンプーは、強めの洗浄力ながら、肌に対して低刺激なのが特徴です。ただし、弱酸性である髪に対して、石鹸系のシャンプーが弱アルカリ性の物ですと、洗った後にどうしても髪がきしみがちになります。

アミノ酸系のシャンプーは、頭皮や髪の潤いを守りながら優しく洗い上げるので、髪の乾燥や傷みが気になる人に適しています。髪がサラサラと滑らかに仕上がるのも魅力ですが、価格はやや高めに設定されていることが多いですね。

最後に両性系のシャンプーは、かなり低刺激になっています。そのため、皮膚が弱い赤ちゃんや幼児に向けたベビーシャンプーなどに使われています。

■シャンプーの種類と選び方

──4種類のシャンプータイプの見分け方はありますか?

佐藤:

シャンプーのパッケージにどのタイプかアピールしてある物はわかりますが、何も書いていなければ、どんなタイプのシャンプーかわかりにくいですよね。その場合は、パッケージ裏に記載された成分表を見てみましょう。

界面活性剤の代表的な成分としては、石油系なら「ラウレス硫酸Na」「ラウリル硫酸Na」「ラウリル硫酸アンモニウム」など、石鹸系なら「ラウリン酸Na」「オレイン酸Na」などがあります。アミノ酸系なら「ココイルグルタミン酸Na」「ラウロイルメチルアラニンNa」など、両性系なら「コカミドプロピルベタイン」「ラウラミドプロピルベタイン」などが表示されています。

──シリコーンとノンシリコーンの違いと、市販品とサロン専売品の違いについても教えてください。

佐藤:

「シリコーン配合とノンシリコーンのシャンプーはどちらがいいのか?」という質問は、お客さまからよく受けます。
シリコーンは基本的に、髪をコートして手ざわりを滑らかにするために配合される成分です。ノンシリコーンシャンプーは髪への負担が少なく、洗い上がりが軽め。シリコーンでコートしない分、きしみやすいイメージを持つ人もいると思いますが、すべてのノンシリコーンシャンプーがそうとは限りません。一概にどちらが良い悪いといえるものではなく、髪の状態や自身が好む仕上がりで選択することをおすすめします。

また、市販のシャンプーとサロン専売品には、明確な違いがあるわけではありません。ただ、サロン専売品は、髪や頭皮に優しく、使い続けることで髪が潤うなどの効果を実感できる物が多い傾向があるのではないでしょうか。また、髪の悩みを相談できる、美容師のアドバイスのもとで購入できる点もメリットだといえるでしょう。

髪の洗い方は「下から上へ」

──おすすめの髪の洗い方について、手順を教えてください。

佐藤:

まずは、ブラッシングから行います。からまったままの髪にシャワーをかけて濡らしてしまうと、髪を傷める原因にもつながります。髪を濡らす前にブラシやくしでとかして、洗髪の際の摩擦を軽減しましょう。毛先から少しずつとかし始めて、徐々に全体のからまりをほどいていくと髪への負担が抑えられます。

──先にブラッシングをすることが大事なんですね。

佐藤:

髪に付着した汚れも、ブラッシングで落とすことができます。なお、髪と頭皮の汚れは、お湯で流すだけでその8割程が落ちるともいわれています。ですから、シャンプー前にあらかじめ汚れを落とすという意味でも、ブラッシングの後はしっかりとお湯で全体を洗い流しておくのが大切です。それに、髪全体をしっかり濡らしておくことで、シャンプーをむらなく行き渡らせることもできます。

──お湯の温度は何℃ぐらいに設定するといいですか?

佐藤:

お湯の温度は、38℃前後が適温といわれています。低温すぎると汚れが落ちず、高温すぎると髪に負担がかかります。人肌ぐらいの温度を目安に設定しましょう。髪を濡らす際のポイントは、表面だけを濡らすのではなく、頭皮までしっかりと頭全体を濡らすこと。そのためには、頭皮にふれるように、髪の中まで指をもぐらせるのがコツです。

指を髪に通しながら、しっかり全体を洗い流すことが大事。

──シャンプーで最初に洗う部分も気になります。

佐藤:

適量のシャンプーを手に取ったら、手のひらで少し泡立ててから、頭部全体になじませていきましょう。最初に頭頂部から洗っていく人が多いかもしれませんが、もみあげから洗うのがおすすめです。もみあげから洗い始めると、髪の下の頭皮までスムーズに指が入っていきます。

もみあげからそのまま垂直方向に頭頂部へ向かって洗い進めたら、反対に頭頂部からもみあげへと向かって洗います。その後は、徐々に耳の後ろから頭頂部、うなじから後頭部といったように、5回分くらいに範囲を分けて洗い進めていきましょう。
ポイントは、指先と指の腹のあいだあたりを使って、少しずつ洗い進めていくこと。例えるなら、「ぬりえ」を色鉛筆で少しずつ塗りつぶしていくようなイメージで、洗い残しのないように隅々まで洗いましょう。そして、シャンプーが残らないように、丁寧にシャワーで流します。

■洗い方の3つのコツ

──シャンプー後は、トリートメントとコンディショナー、どちらを使うのがいいのでしょうか?

佐藤:

トリートメントとコンディショナーは同じような物だと誤解されがちですが、その役割はまったく異なります。トリートメントは傷みが気になる髪の内部を補修する目的で使用する物。一方のコンディショナーは、髪の表面を滑らかにする目的で使用します。

いずれの場合も、髪の中間から毛先にかけてのみ使います。頭皮のためを考えて作られたスカルプ系の物など、商品によっては頭皮までつける物もありますが、基本的には毛穴を詰まらせないためにも頭皮は避けましょう。つけた後は、髪に軽くくしを通すと手ざわりが良くなるのでおすすめです。トリートメントやコンディショナーは頭皮につけない分、洗い流す際はシャンプー時よりも少し軽めで大丈夫です。

──コンディショナーやトリートメント、いろいろ使えばより高い効果が得られるものですか?

佐藤:

髪の状態が良好で、質の高いシャンプーを使っていれば、場合によってはシャンプーだけでも十分にケアできることもあります。必ずしもコンディショナーやトリートメントを多用するのがいいわけではありません。量よりも、髪の状態によって適切なケアをするほうが重要です。
また、ヘアマスクやヘアパックはあくまで集中ケア用なので、使いすぎると髪が重たく感じられることもあるでしょう。週に2、3日の使用にとどめたほうがいいかもしれませんね。

正しいシャンプー選びと髪の洗い方、乾かし方で健康な髪づくりを

──洗髪後、忙しいときには、洗った髪をそのまま自然乾燥させてしまいがちです。

佐藤:

髪をきれいに保つためには、洗い上がり後はなるべく早くドライヤーで乾かすのが理想的です。濡れている髪は、髪の一番外側にある組織で、つやを与えてくれるキューティクルが開いているため、非常に傷みやすい状態となっています。少しタオルや衣類が擦れただけでもダメージを受けてしまうこともあるんです。また、自然乾燥は髪本来の癖が出やすく、うねったり広がったりしやすいので、洗い終わったら素早く乾かすことを心掛けるといいと思います。

──ドライヤーで髪を乾かすときのコツを教えてください。

佐藤:

ドライヤーで髪を乾かす際には、キューティクルを逆立てないように風を上からあてて、根元から指で髪を持ち上げながらすくように乾かしていきます。きれいにまっすぐ整えたいのであれば、髪の根元が乾いた半乾きぐらいの時点で、ブラシを入れてブローしましょう。
また、髪の傷みが気になり、トリートメントやコンディショナーだけではケアが不十分だと感じる人は、洗い上がりの後に、ドライヤーの熱から髪を守り、補修もしてくれる、洗い流さないタイプのトリートメントを使うのもおすすめです。

ドライヤーの風を上からあてながら、指で髪を持ち上げながらすくように乾かす。

──最後に、ほかにも気をつけるポイントがあれば教えてください。

佐藤:

健康で美しい髪を育むためには、正しく洗うほかに、食事や睡眠といったさまざまな要素も関係しています。季節によっても頭皮や髪の状態は変わってきますので、ご自身の今の髪の状態を把握し、まずは適切なシャンプー選びと、正しく丁寧に洗うことを心掛けてみてください。
毎日の洗髪を変えるだけでトラブルを防ぎ、髪質をぐんと改善することができると思いますよ。

※感染対策に十分に配慮して取材および撮影を行いました

<プロフィール>

佐藤佑哉(さとうゆうや)

美容室「Blossom」所属。スタイリスト歴20年以上のベテラン美容師で、美容界の権威あるコンテスト「Japan Hairdressing Awards(JHA)」2019年のファイナリストでもある。得意な技術は、前髪命の前髪カット。

 

執筆者プロフィール

  • 本稿は、執筆者が本人の責任において制作し内容・感想等を記載したものであり、SBI新生銀行が特定の金融商品の売買や記事の中で掲載されている物品、店舗等を勧誘・推奨するものではありません。
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