会社員も必要?確定申告の対象者や方法について

毎年、年度末が近づいてくると、確定申告のニュースが流れます。会社に勤めていると「自分には関係ない」と感じられるかもしれませんが、本当に確定申告は、会社員に関係ないものなのでしょうか?
ここでは、確定申告の対象になる人や確定申告の方法について、まとめてご紹介します。

確定申告とは?

確定申告とは、簡単にいうと「税金の計算をして納めるための手続き」です。日本に暮らしている人は、所得に対して所得税を払わなければいけません。 しかし、税金がかけられる所得の金額は、単純に「いくらお金を受け取ったか」だけで決まるものではありません。
所得税の計算は、次のように行われます。

所得税額=(年間の収入金額-年間の経費-所得控除額)所得税率-税額控除額

これを計算して所得税額を求め、国に対して申告するのが確定申告です。なお、確定申告の結果は各自治体にも共有され、それをもとに翌年の住民税が算出されることになります。 もし、税金を納めなければいけないのに確定申告をしなかったり、税金を納めなかったりした場合は、加算税や延滞税がかかる可能性があります。

確定申告の期間は原則、毎年2月16日~3月15日となります(土日・祝日の関係でずれることがあります)。 つまり、前年の1月1日~12月31日までの収入について、翌年、確定申告を行うということです。
なお、確定申告には、納め過ぎた税金を戻してもらう「還付申告」もあります。これは、確定申告の期間以外でも、5年間さかのぼって申告することができます。

年末調整と確定申告の違い

年末調整は、その年の社員の給料の合計額から、給与所得控除や所得控除を差し引いて課税所得額を求め、税額控除を反映させて1年間の所得税額を確定させる行為です。
会社員は会社に「給与所得者の扶養控除等申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」「給与所得者の配偶者控除等(異動)申告書」を提出します。
確定した所得税は、毎月差し引いていた源泉所得税の合計額と照らし合わせ、過不足分を12月の給与や1月の給与等で調整します。
実際の年末調整の手順は会社によって異なりますが、一般的な流れをご紹介します。これは、12月の給与で所得税の過不足を調整しているケースです。

1. 年間の所得にかかる所得税の額を求める

1年間の所得を合計し、そこから給与取得控除を引きます。さらに、あてはまる所得控除額を引いて、課税所得を計算します。 課税所得に所定の所得税率を掛け、あてはまる税額控除額を引くと、所得税額がわかります。計算式は以下のようになります。

所得税額(A)=(1年間の社員の給料の合計-給与所得控除額-所得控除額)所得税率-税額控除額

2. 所得税額の過不足を求める

国が定めた所得税額と、1で計算した所得税額を照らし合わせ、過不足があるか計算します。

所得税額の過不足(B)=1年間の社員の給料から差し引いた所得税の合計金額-所得税額(A)

3. 所得税額の過不足(B)を12月の給与に反映させて正しい所得税を徴収・納付

12月の給与明細に「年末調整還付(差し引いた所得税額が多すぎた場合)」や「年末調整徴収(差し引いた所得税額が足りなかった場合)」という名目で金額がのるのは、 このような過不足の調整のためです。
また、年末調整では、徴収よりも還付が行われる場合が多いため、「12月の給料は普段より少し多い」ということが起こりやすくなるのです。

このように、年末調整では、ほとんど確定申告と同じことが行われています。 年末調整の結果が記された源泉徴収票は社員に渡されるほか、税務署や市区町村にも提出されます。 これをもとに翌年の住民税が算出される点も、確定申告と同様です。

会社員の場合、事業を営んでいる人とは違い、毎年決まった給料が会社から支給されます。そのため、12月が終わらなくても、年間の所得額を確定させるのが容易です。 また、会社は毎月の給与から源泉所得税を徴収し、納めることが義務付けられていますから、すでに納めてある所得税の過不足についても把握できます。 そこで、社員が確定申告をする代わりに、会社が「所得税額を計算して納税する」という、年末調整を行ってくれるのです。

年末調整を行った社員は、ほかに申告すべき収入がなければ確定申告をする必要がありません。 なぜなら、年末調整をすることで、すでに所得税額が確定し、翌年の住民税額を計算することができるからです。

確定申告が必要な人とは?

会社員の場合、年末調整をしてもらえるため、原則として確定申告は必要ありません。しかし、会社員の中にも、確定申告をしなければならない人や、確定申告をするメリットがある人がいます。

確定申告をする義務がある人

以下に該当する人は、会社員であっても必ず確定申告をする必要があります。確定申告をせず、納めるべき税金があった場合、脱税になってしまう可能性もあるため、忘れないようにしましょう。

  • 給与収入が2,000万円を超える人
  • 給与収入が2,000万円を超える人は、会社員であっても年末調整の対象外と規定されているため、確定申告をしなければなりません。 給与収入の変動があり、2,000万円を超えたり超えなかったりする人は、年によって確定申告が義務かどうか変わりますのでご注意ください。

  • 副業等、給与以外の所得が20万円を超える人
  • 副業収入があったり投資などをしていたりする場合、所得が20万円を超えたら確定申告が必要です。 ただし、投資を行っている人のうち、源泉徴収ありの特定口座で取引を行っていて、すでに所得税を納めている人や、 NISAやつみたてNISAのように所得税がかからない制度を利用している人は申告の必要はありません。

    また、副業収入を得ている人は、20万円を判定する基準が「収入」ではなく「所得」である点に注意しましょう。
    所得とは、収入から経費を引いた金額です。「ハンドメイドアクセサリー販売で30万円売り上げたが、材料費と手数料で20万円かかった」という場合、 所得は10万円になりますから、確定申告の必要はありません。
    ただし、このような場合でも、税務署に「なぜ申告をしないのか」と質問されたときに説明できるよう、領収書などを保管しておくと安心です。

  • 給与を2ヵ所以上から受けていて、副業の給与収入が20万円を超える人
  • 年末調整は勤務先の会社が行いますが、複数ある場合は1ヵ所と決まっています。 一般的には、収入の高いほうの勤務先で行いますが、副業の収入が20万円を超えている場合は、確定申告が必要となります。

    収入や所得の判定など、「自分の場合はどうだろう?」と思ったら、税務署に相談してみてください。状況を説明することで、確定申告の必要があるかを教えてもらえます。
    なお、副業所得が20万円以下であれば申告免除となり、確定申告は必要ありません。しかし、住民税は副業所得が20万円以下でも課税されるため、別途申告が必要です。 申告しないと税務署から連絡がきたり、追加納税が必要になったりしますので、各地方自治体の市税事務所や都税事務所、役所などで手続きしましょう。

確定申告をするメリットがある人

確定申告をすることで、年末調整では対応していない控除を反映させて、所得税や住民税の金額を減らせたり、払いすぎた税金が還付されたりする場合があります。 これは還付申告となりますので、確定申告期間以外でも申告することが可能です。あてはまる控除がある人は、申告することをおすすめします。

  • 初めて住宅ローン控除を受ける人
  • 住宅ローン控除は、正確には「住宅借入金等特別控除」といいます。 これは、条件に合致する住宅を購入(または増改築)するために住宅ローンを組んだ人が利用できる制度で、年末調整で対応してもらうことができます。
    ただし、初年度だけは確定申告をしなければいけません。住宅ローンを組んだ年の翌年の確定申告シーズンが来たら、忘れずに確定申告を行いましょう。

    住宅ローン控除は、所得税率を掛ける前の金額から差し引く「所得控除」ではなく、税金から直接差し引ける「税額控除」となります。 そのため、利用するかどうかで、年間数十万円ほど税金が変わることも珍しくありません。義務ではありませんが、申告することで節税が可能ですから、必ず確定申告に行きましょう。

  • ふるさと納税をした人
  • ふるさと納税をすると税金の控除や還付が受けられますが、そのためには確定申告が必要です。 ただし、1年間に5自治体までなら、「ワンストップ特例制度」の申請を行うことで、確定申告をせずに税金の控除や還付を受けられます。 なお、ワンストップ特例制度の申請を行った人でも、副業の所得が20万円を超えた場合など、それ以外の理由で確定申告をするのであれば、 ふるさと納税についても確定申告で申告をする必要があります。

  • 医療費控除を受ける人
  • 医療費控除は、年間にかかった医療費が一定額を超えた場合などに、控除を受けられる制度です。 入院費用や出産、不妊治療の費用なども医療費控除の対象になりますから、該当する人は申告することで節税できます。 対象は生計を同一にする家族のため、家族の医療費をまとめれば控除を受けられるようになる可能性は高くなるでしょう。
    なお、入院や手術に際して民間保険などの保険金を受け取った場合は、該当の病気にかかった費用から、受け取った保険金の額を差し引いた金額が控除の対象金額となります。

  • 投資で損失が出た人
  • 投資で損失が出た場合、損益通算という制度を利用して、利益にかかる所得税を減らすことができます。 もし、利益よりも損失が大きく、赤字が残った場合、繰り越し控除を利用して、翌年以降の利益から損失を差し引くことも可能です(最大3年間)。 この制度を利用するためには、確定申告が必要です。
    ただし、NISA口座は、その他の特定口座や一般口座での投資と損益通算をすることができません。 NISA口座で損失が出て、特定口座で利益が出た場合も、利益に対しては通常どおり課税されます。

確定申告書類の提出方法

確定申告は、次の3つのいずれかの方法で提出することができます。

郵送で提出

自宅で確定申告書類を作成し、郵送で提出する方法です。 確定申告書類の作成は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で行えます。 控えを返送してほしい場合は、控えの書類と返信用封筒を同封します。

税務署に提出

作成した確定申告書類を税務署の窓口に提出するほか、その場で作成することもできます。確定申告時期になると、 確定申告書作成の相談コーナーが各税務署等に設置されるため、やり方がよくわからない人は利用してみましょう。

国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用

e-Taxは、インターネットを介して確定申告を行うことができる、国税電子申告・納税システムです。 2018年までは、利用するためにマイナンバーカードやICカードリーダライタが必要でしたが、 2019年1月からは、事前に税務署で手続きをしておくことで、IDとパスワードを使った利用もできるようになりました。
ただし、どちらにせよ事前準備は必要です。利用したい人は早めに準備しておきましょう。

事業所得と雑所得の申告方法の違い

個人事業主など、事業を営んでいる人の所得は「事業所得」になります。 確定申告をする場合は、青色申告決算書(青色申告の場合)や収支内訳書(白色申告の場合)などを確定申告書類に添付します。

しかし、会社員の副業程度の場合は、事業というほど大掛かりではない場合が多いため、ほとんどが「雑所得」としての申告で問題ありません。 その場合は、青色申告や白色申告のための書類の作成も不要です。
どのように申告すればいいか迷う場合は、税務署で相談してみましょう。

会社員も確定申告で節税できる場合がある

会社員でも、確定申告をすることで所得税や住民税を節税できる可能性があります。確定申告を他人事だと思わずに、必要かそうでないかを改めて考えてみてください。
特に、副業をしている人や投資をしている人は、その年ごとに申告の必要があるか、収支を確認しましょう。

 

執筆者プロフィール

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